第8話 60階層

三人の人影は、それぞれつま先から頭の先まで全てが黒い人形の生物だった。


一才光が反射していないため、そこだけ空間が切り取られたかのような錯覚に陥いるほどに黒い。


「行くか」

「……ん。初手、蒼紫霜電?」

「いや、少し様子をみよう。俺が前に出るから、援護を頼む」

「ん」


俺は紅刀と蒼刀を引き抜き、黒いモンスター……仮称・人影に向けて構える。


人影はゆっくりとした動作で空中に黒い槍のようなものを出現させ、手に取る。

そして、先頭の一体が突進攻撃を仕掛けてきた。


不意の加速だが、警戒していた俺が喰らうことはない。


念の為「天輪」でバリアを生成しつつ、空中へと跳んで回避する。一瞬の後、もう一体が空中にいる俺に向けて突進攻撃を仕掛けてきた。

俺はニャルトラ・ステップを使用して上方向へと跳び、さらに今まさに突進攻撃を仕掛けようとしている人影に向かってこちらから突進攻撃を仕掛ける。


相手の槍を片方の刀で押さえ、俺は人影を斬ることに成功した。


モヤのようなものが斬ったところから溢れ出て、たちまち切断した場所を塞いでしまう。


「……まず」


人影は標的を澄火に切り替えたようで、今度は二体同時に攻撃を仕掛けている。


––––閃撃・蹴爆


俺は加速装置・制限解除インフィニットアクセルを起動し、宙を蹴って爆破モードにしたニャルトラ・ステップでまだ少し残っている傷口を蹴り付ける。


体が煙でできているのなら、霧散させてしまえばいいだけの話だ。


人影が反応できないスピードで蹴りが着弾し、傷口により集まろうとしていたモヤを吹き飛ばしつつ大きなダメージを与える。


「アム・レアー、起動」


俺は四機のアム・レアーを展開して、四機の射線が人影でちょうど収束するように動かす。


「ショット」


俺のMP送料の1/3を以て人影を攻撃する。

流石に耐えきれなかったのか、人影はぼふりと爆発した。


「澄火!」

「……ん!離れて!」


俺は澄火へ攻撃を仕掛ける人影に斬りかかろうとして、澄火に制止される。


一瞬の後、人影はバラバラになり紫電に打ち砕かれていった。

俺の背中に冷や汗が走る。

澄火が制止してくれなければ、俺も一緒にバラバラになっているところだった。


「……ん」


澄火は満足そうに頷くと、短剣を納刀した。


「なかなか強敵だったな」


一体一体のスピードが速い上、三体という数もだいぶ厄介だった。

しかも、傷がどんどん修復されてしまう以上、人影を倒すにはその再生能力を突破するだけの超火力が必要となる。

俺たちにはそれぞれそういった超火力を出す手段があったからどうにかなったものの、なければかなり厳しい戦いになりそうだ。


「……ん。私たちなら余裕」

「まあ、確かにそうかもな。どうする?先へ行くか?」

「……ん。80層で引き換えそ」

「了解」

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