第6話 二色の電撃

黒いモヤは、次々にモンスターを周囲に生み出していく。どれもが結構な強さを持つモンスターだ。


どうやら、あの黒いモヤ自体がモンスターを生産する一種のモンスターなようだ。


「……ん。突撃」


澄火がナイフを周囲に展開してだっと駆け出す。


「……ん!」


ナイフが連動した動きで周囲を薙ぎ払う。


ここまで来る途中で少しずつ練習をした結果、澄火は五つの短剣を同時に動かすことは自在にできるようになった。


その成果がバッチリ現れ、魔物が次々と両断されていく。


俺はアム・レアーを展開し、澄火を後方から援護する。


そして澄火はモヤのすぐ近くまで接近すると、銃……ラストショット(命名者:若槻)を構える。

そして、MPを込めて引き金を引いた。


ラストショットから弾丸が飛び出し、モヤのようなモンスターに着弾。込めたMPに対して、明らかに逸脱した威力の爆発を起こした。


「––––––––!」


発声器官は見受けられないが、どうやってか悲鳴をあげるモヤのようなモンスター。


邪魔だったモンスターの生産が、ぴたりと停止した。


「……今だ!」


俺は蒼刀を左手に持ち、抜刀術の構えを取る。


「……氷花雪界」


後衛のポジションから一気に澄火の前に躍り出て、MPを大量に込めて一気に振り抜く。

一瞬でモヤが全て凍りつく。


「澄火!」

「……ん」


澄火は右手に今まで見たこともない赤い電撃、そして左手に青い電撃を集中させる。


「……は!」


澄火が気合いを込めてそれを解き放つと、それぞれ赤い電撃は右に、青い電撃は左に、モヤへと収束するような弧を描いて放たれる。


二色の電撃はやがて驚異的なスピードで互いに引き合うと、モヤのモンスターの氷の中心部で接触する。

どうやら、二色の電撃の持つエネルギーで氷を溶かしながら進んだようだ。


そして、紫電がそこから氷の大きさのドーム状に広がり、一瞬で氷を水蒸気に変える。


氷の体積が一瞬で1700倍にもなったことで、周囲の圧力が猛烈に増大し、周囲に凄まじい爆発を巻き起こした。


俺は急いで澄火の側により、「天輪」によってバリアを展開する。


15秒ほど経ち、爆発によって生じた風が止んだのを確認してから、俺はバリアを解いた。


舞い上がった粉塵はを払うべく、俺は思いっきり周囲を手で薙ぐ。


どうん、という小気味良い音が鳴って周囲の粉塵がはけていく。


そして、目の前にあったのは目を疑う光景だった。


まず、ボスモンスターであるモヤのようなモンスターがいた場所の地面がえぐれて無くなり、そして残っている部分は高温によってガラス化し、ひび割れが走ってしまっている。


モンスターは影も形もない。そしてさらに驚きなのは、爆発によって観客席との間に下ろされている柵は歪んでしまっている。


柵は爆発が起こった場所から少し離れたところにあるので、いかに爆発の威力が凄まじかったのかが窺える。


「すごい威力だな」

「……ん」


俺たちは宝箱が出現するまで、しばし目の前の光景に見入るのであった。

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