第5話 20階層

「それで、短剣は要練習として……銃の方を試してみないか?」

「……ん」


澄火は一旦短剣を腕輪にしまい、銃を取り出す。

そして、前方へと構えた。


構える姿が、なんとも様になっている。少し憧れてしまうくらいには格好良かった。


「……ん」


澄火は銃にMPを込めて引き金に手をかける。

キュィィィィという音が鳴り、銃にブルーグリーンのラインが走る。


そして、澄火が引き金を引いた瞬間、チュンと弾丸が撃ち出された。


ズンと鈍い音が響き、着弾地点にかなりの勢いの爆発が起こる。

大体、アム・レアーの弾丸を爆発モードに切り替え、俺のMPの半分ほどを込めて撃ったくらいの威力だ。


「……ん」


続いての試射をするかと思ったが、澄火は銃を腕輪にしまう。


「どうした?」 

「……ん。一度使うともう一度使うようになるまで時間がかかるみたい」


おっと。

絶大な威力はあるが、なんとも微妙なデメリットがついていたようだ。


だが、一度撃てれば十分だろう。そもそも澄火には「紫電」という強力な武器があるし、強敵にはいくら威力が高いとはいえ二度目は対策されて攻撃が通らない可能性が高い。


となれば、一回の戦闘に一撃という縛りもあまり澄火に影響するものではないだろう。


……あれをどっかんどっかん撃つのも魅力的なことは確かだが。


「さて……新しいアイテムの確認も終わったし、ダンジョンに潜っていくか」

「……ん。先行する」


澄火はそういうと、紫電を全身に纏わせてダンジョンの奥へと進んでいく。


俺はアム・レアーを周囲に展開し、澄火へとついていく。


洞窟を駆け抜け、フィールドを駆け抜け、俺たちはあっという間に20階層のボス部屋まで到着した。


これが初めてのボス部屋である。

ダンジョンによってボス部屋の数は違うとはいえ、ここまで深い階層に初めてのボス部屋があるというのはなかなか珍しい。


少なくとも俺たちにとっては初めての経験である。


「行こ」


澄火は俺がいることを確認してから、ボス部屋の扉を開ける。

かなり広めのコロッセウムのような空間。ご丁寧に、観客席までもが生成されている。


その中央に、何やら黒いモヤのようなものが集まっていた。


背後でバタンと扉が閉まる。そして、コロッセウムの観客席との間に柵が下ろされた。


「戦闘開始、か」

「……ん」


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