第4話 白銀の短剣

まずは短剣からである。

澄火はぐっと短剣を逆手に持って構える。


こっそり練習していたのか、なかなかに様になっている。


「……ん」


澄火がMPを込めると、ふっと同じ見た目をした短剣が澄火の周囲に出現した。それも5本。

アム・レアーより、一本多い。


澄火が短剣を振ると、短剣も追随して動く。


「……幻影か?」

「……実体があると思う……多分」


実戦で試した方が良さそうだ。


俺はステータスで強化されている感覚を解放し、モンスターの気配を探る。

すると、奥の方から微かに物音が聞こえてきた。


「あっちにいるみたいだな」

「……ん。行こ」


澄火は地面を蹴ってそちらへと走る。そこにいたのは、荻窪ダンジョンにもいた小さい鬼だった。


澄火は短剣を構えて、小鬼へと短剣を振る。


短剣が連動するように動き、あっさりと小鬼を切断した。


つまり、あの短剣にはそれぞれ実体があるということだ。


「……強いな」


俺のアム・レアーのお株を奪いそうな活躍っぷりである。

間合いの広さや照準の拡張性ではアム・レアーの方が上だが、近距離では短剣の方が強そうだ。

紫電と組み合せることもできるので、かなりポテンシャルが高そうだ。


「……ん。使い方次第」


澄火はそういうと短剣をじっと見つめる。すると、澄火が短剣を動かしていないにも関わらずついっと短剣が移動する。

そして、しばらく短剣が動き回るが、なんともぎこちない。果ては、短剣同士がぶつかり合ってしまっていた。


澄火は一旦短剣を仕舞うと、疲れたように首を振った。出現していた浮遊する短剣は、澄火が短剣を鞘に納めた瞬間に消滅した。


「……ん。ちょっと無理」


短剣本体と連動して動かすのは簡単だが、子機(浮遊している短剣)に独自の動きをさせたり個々に別の動きをさせたりするのはまだ難しそうだ。


「慣れれば簡単だよ」


俺はアム・レアーを虚空から取り出して操ってみせる。今ではアム・レアーにMPを込めながら意思を込めるような真似をしなくても、自在に操れるようになった。


「……ん。要練習。それはそれとして、一つ思いついた使い方がある」

「……なんだ?」


なんだか少し嫌な予感がしつつも、俺は魔物の気配がする方へと行く。


「……ん。若くんはここで待ってて」

「…………?」


俺は何をするつもりなのかと思いながらも、言われた通りにする。


澄火は全身を紫電に変化させ、小鬼の上へと飛んでいく。

そして、一瞬実体化して短剣の鯉口を切るとまたすぐに鞘に収める。

再び紫電となって澄火は戻ってきた。


「……凄まじいな」


一瞬の後、小鬼は縦に6等分されてどちゃりと地面に崩れ落ちた。


ステータスで強化された俺の目には、澄火が短剣をわずかに抜いた瞬間に周囲に子機が現れ、小鬼に降り注いだのが見えた。


「……ん。どう?」


澄火は少しドヤ顔になりながらそう言った。


「強いな」

「……ん。ありがと」

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