第1話 黒服
俺の突進攻撃をひらりと回避し、先ほどレーザーを撃ってきたやつは再度レーザーを撃ち込んでくる。
今度は俺がそれを回避し、そいつと対峙する格好を取った。
「お前の名は?」
「……フン」
「フンというのか?」
「リイカだ」
リイカはそういうと、虚空から剣を取り出す。アイテムボックスによるものか、あるいは剣自身の能力か……残念ながら、それは分からなかった。
「はあ!」
リイカは振りかぶり、斬撃を飛ばしてくる。
剣を振るという動作によって弾道がはっきりとしていて、さらに若干飛ぶ斬撃の発生も遅いため、避けるのは容易である。
まさか剣の能力がそれだけということはないだろう。
リイカは飛ぶ斬撃を使いつつ、そのまま自身でも斬りかかってきた。
回避したその瞬間、チャキチャキチャキと剣の全長が伸び、鞭のように俺に迫ってくる。
左手に持った蒼刀で弾くと、チャキチャキチャキと音を立てて再び元の姿に戻っていく。
「……蛇腹剣か」
ダンジョン協会のデータベースで何件か似たような機構を持つ剣を見たことがある。
「…………」
リイカは答えずに、今度はレーザーをも交えた攻撃を放ってくる。
俺は天使と堕天の戦闘を思い出しながら、それらの攻撃を捌いていく。
下手に攻撃をすればカウンターを喰らう危険性が高いので、ひたすら回避と防御を繰り返す。
「……今だ」
蛇腹剣が伸び切ったタイミング、俺は周囲に仕込んでおいたトラップを発動させる。
––––照射
互いに当たらないように配置したアム・レアー四機の攻撃を一点に集中させる。
やはり蛇腹剣というのは構造的に脆い。
アム・レアーのビームの照準を極限まで絞っていたということも相まって、蛇腹剣はその中央からちぎれ飛んだ。
これまで途切れることなく攻撃を仕掛けてきていたリイカの動きが一瞬停止する。
その隙を、俺は見逃さなかった。
「…… 氷花雪界!」
蒼刀にふんだんにMPを込め、抜刀術を放つ。体を紫電に変化させて回避した澄火以外の周囲のもの……すなわち、黒服二人を凍り付かせた。
さすがというべきか、氷漬けにされたにも関わらず脱出を試みる黒服二人。
俺はそいつらを結んだ直線の延長線上にある地点へと跳躍する。
そして、ステータスセイバーに貯蓄されている全ステータスを開放して
––––閃撃・終
そのまま、渾身の抜刀術を放つ。
身動きも満足に取れない黒服二人は、斬撃と、斬撃によって発生した竜巻の如き豪風に、なす術もなく飲み込まれていった。
後には、一片の黒い布がヒラヒラと舞っているのみ。
人間、自分のやったことの結果が明確に見えなければ、存外罪悪感など抱かないものだ。
俺もその例に漏れず、何の感慨もなかった。
「……帰ろうか」
「……ん」
俺たちは連れ立って、飛行機へと戻った。
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