第二章 蒼紫霜電
プロローグ
「……んー」
「平和だな」
「……ん」
澄火は俺の膝に頭を乗っけて甘えてくる。
頭を撫でると、澄火は心地よさそうに体を伸ばした。
「……ちっ」
突如、平和な雰囲気をぶち壊すように澄火が舌打ちをする。
「澄火さん?」
澄火は俺の呼びかけに応えずに、起き上がると窓の外を見る。
「……襲撃」
「……なんだと?」
俺は窓の外を見る。
黒い豆粒のような点が、徐々にこちらへと迫ってきているのが見える。
「……まずいな」
「……ん。先行く!」
澄火はそういうと、紫電に変化して飛行機の壁を抜ける。
飛行機の壁は絶縁体じゃないのかとか、服はどうなってるんだとか色々とツッコミどころはあるが、今はそれを追求している場合ではない。
俺はグルグルと飛行機のドアを回して、無理やり開く。
気圧差でものすごい風が生まれるが、まあ些細な問題である。
俺はニャルトラ・ステップで宙を蹴り、飛行機の外へと飛び出る。
そのまま扉を閉めて、黒い点の方へと翔ける。
「……ん!」
どおんという心地よい轟音が響く。澄火の『紫電』による雷鳴だ。
「効かん!」
「……日本語?」
紫電をくらってなお無事だった黒い点の正体が、雲の中から姿を現した。
二人組の男。顔は覆面で隠れている上に、ダボッとした服を着ていて体型もわからない。
澄火が指摘したように、日本語を話している。……とは言っても、エルヴィーラ王女のそれとは違って少し違和感があるが。
「世界アーティファクト調査団……か?」
「ご名答」
「……そのアーティファクトを渡せ。何、しっかり報酬を与えようではないか」
やっぱりカツアゲか。
実は、国によって探索者になれる基準というのは違う。
日本は、探索者へなれるだけの倫理・道徳を持っている者しか探索者になれないようなシステムを構築し、そして厳重な管理のもとそれが運用されている。
対して、中国やアメリカなどの国は、一切そういうシステムを持たない。それぞれ、中国国民であるか、アメリカ国民でさえあれば自由にダンジョンへ入ることができる。
そのため……こういうバカが現れる可能性は、中国の方がより高くなる。
「……去れ、礼儀も知らぬ者に渡すものなどない」
「……ふん、ならば」
黒服の1人が飛行機に向けて指先を向ける。
「これで答えが変わるか?」
「––––
俺は体を黒服と飛行機の間に入れ、早速ピース3の能力を発動させてバリアを展開する。
ピッと何かレーザーのようなものが黒服の指先から出現するが、あっさりとバリアによって阻まれた。
「……澄火、
「……ん」
俺は腕輪から取り出した蒼刀と紅刀を抜刀し、ニャルトラ・ステップで宙を蹴った。
『天翔』の本領を見せてやるとしよう。
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