第9話 扉

俺たちは今度こそ羅針盤の示す方へと急ぐ。景色を見る余裕などない。


そうしてたどり着いたのは、山の斜面だった。俺は勘に従い、アム・レアーの照準を羅針盤をさす地点に合わせる。


「出力最大……拡散。発射!」


いつもより丁寧に調整をし、俺のMPを全て消費して攻撃を放つ。


散弾のように発射されたビームが斜面に当たり、ものすごい轟音を立てて破壊を撒き散らす。


中から現れたのは、前にも二度見たことがある、表面に羅針盤と似通った思想を感じさせる幾何学的な模様が刻まれた扉だった。


アム・レアーのビームをいくつかくらったはずだが、傷一つなさそうだ。


羅針盤に反応したのか、あるいはアム・レアーのビームに反応したのか、扉の線が青色に発光し始める。


そして、とくん、とくんと心臓が鼓動するようなペースで、中央にある窪みが点滅を始める。


俺は羅針盤の蓋をかぱりと閉じて、中央の窪みに嵌め込む。


ぶうん、という音が響き、扉の線が緑色に光る。そして、扉がぷしゅーっと左右に開いた。


中にはおそらくギミックがあると思われるが、こちらには秘策がある。


俺は腕輪の中から、エルヴィーラ王女に言われて落札した3つセットの鍵を取り出す。


すると、ホワンと3つの鍵のうち一つに光が灯った。


「……さて」


俺は扉の向こうへと足を踏み入れる。


入り口付近を探索すると、鍵と呼応するように光が灯っている鍵穴を発見する。


鍵を差し込むと、鍵が飲み込まれ、代わりに一つのレバーが現れた。


カシャンとそれをおろすと、ゴゴゴゴと地面が揺れ、下からエレベーターのような装置が現れた。

どうやら、鍵は使い切りのようで、排出される気配はない。


俺は澄火と共にエレベーターに乗り込み、起動スイッチを押す。


どうやら、澄火が紫電で扉を塞いでくれたようだ。これで、誰かが入ってくる心配はないだろう。


エレベーターは1分ほどで目的地に到着し、扉が開いた。


扉の向こうには、5本指の手形が表示されたディスプレイが鎮座している。

どうやら、鍵を使えばアーティファクトを生成する部屋に直通で行けるようだ。


ひょっとしたら、この鍵は管理者のものだったのかもしれない。

メンテナンスや改造を施す際に、いちいちトラップを停止させるのは危険だから、鍵を使って奥に簡単に入れるシステムを整えた……というのは考えすぎだろうか。


まあ、真相は俺には分からない。今はひとまず、アーティファクトを手に入れることにしよう。

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