第8話 世界アーティファクト調査団
俺たちの動きによって気流が発生し、雲がどんどんとかき消されていく。
地上では軽めのソニックブームが発生し、大量の砂が巻き上げられて大惨事を起こしている。
まさしく天変地異を起こしているようなものなので、本当はよくないが……仕方がない。
悪いのは、俺たちを追いかけてカツアゲしようとしている奴らと、そういう奴らを放置している中国ダンジョン探索者協会である。
「ん。諦めない」
「ああ。そうみたいだな」
しかしこんなことをしても、全く奴らは諦めなかった。
結構な速さで移動しているので、これについて来れるということはかなりの実力があるということである。
尤も、空へとアクセスする手段を持たないようで、地上をうろうろするしかできないのだが。
「殺ってもバレないよ?」
「ダメだから」
かなり不機嫌モードな澄火さんが、殺意を込めた目で地上を睨む。
心なしか、体に纏う紫電もトゲトゲしい。
「……話し合いで解決しよう」
「……ん」
俺は空中をを蹴って、ズドンと地上に降り立つ。
周囲に地面がかなりの揺れを起こした。
ひょっとしたら、地震計に引っかかってしまったかもしれない。
“お前たちは何者だ?“
俺はタブレットの翻訳機能を使ってそう示す。
“俺たちは、世界アーティファクト調査団だ!”
聞いたことがない名前の組織だ。
俺は日本ダンジョン探索者協会のデータベースで検索する。
……お、出てきた。
世界アーティファクト調査団
中国を活動拠点にする、アーティファクトを収集する活動を行っている探索者集団。
強引な手口の活動が問題化しているが、中国ダンジョン協会は特に対応する素振りはない。
他にも色々と書いてあるが、重要なところを要約するとこんな感じである。
“で、それが何の用?”
“その羅針盤を渡せ!それは我らの活動にとって、不可欠なものだと見受ける!それから、あの丸い武器もな!”
“あー”
おそらくこいつらはオークション会場で俺がアム・レアーを使ったのを何かで聞いて、アーティファクト所持者だということを知ったのだろう。
「面倒だな……」
何が面倒なのかというと、この三下風味の奴らは下っ端にしかすぎないであろうことである。
こいつらの要求を断ったところで、別の奴らがカツアゲに来るだろう。
中国ダンジョン探索者協会が動かないということは、かなりの政治力を持っている組織だということだ。
要求は、おそらく政治的立場も利用したものへとエスカレートしていくに違いない。
例えば、研究のため貸してほしい……などと言ってそのまま返さないとかの姑息な手段に出てくることも考えられる。
「……はあ」
俺はため息をつく。
“断ると言ったら?”
「––––!」
おそらく問答無用とでも言ったのだろう。
組みつこうとしてきた三人の男女を、澄火の紫電が撃ち抜いた。
そのまま三人は倒れ伏し、ぴくりとも動かなくなる。
「……死んでないよな?」
「ん。ギリギリ」
「…………行くか」
面倒ごとに巻き込まれないうちに、さっさと用事を済ませて出国してしまおう。
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