第3話 報酬

「お疲れ様。体調はどうかしら?」

「もう万全です。今日も早速ダンジョンへ行こうかなと考えてます」

「そう。気をつけてね……と、世間話はここまでにしましょう。報酬の話をしないとね」


そういうと、熊川さんは部屋のディスプレイにスライドを表示する。


「まず、堕天とバクの懸賞金、VIPを守ったことによる功績、その他諸々を合わせて、100億円が報酬として支払われるわ」


100億円。

オークションで消費した金額が、色をつけて帰ってきた。使い道は……次回のオークションということになるだろうか。


「あとは、海外のかなりの数の国家から今後入国した際は国賓待遇をするとの通知が来たわ。一時的にでも拠点を構える場合は、連絡してくれれば家から何から全て用意してくれるそうよ」


それはかなりありがたい。

現状俺たちの目的であるアーティファクトは、おそらく世界中に散らばっている。

海外のダンジョンに挑戦してみたい気持ちもある。ありがたく活用させてもらうとしよう。


「一応、日本政府も……というよりここ協会も、国内に家を用意するそうだけど……どうする?」

「……そうですね」


正直、俺たちは今住んでいるマンション“StarElements”を結構気に入っている。

都心へのアクセスも存外悪くないし、入居者もほぼいないので周囲に気を使う必要もない。

なんなら、昨日・一昨日とレイアウトを変更して俺たち好みに仕上げたばかりだ。

そんなわけで、引越しの必要性は全く感じない。


「そちらはお断りしようかなと」

「そう。では、そのように取り計らっておくわ。最後に、あなたたち専用の戦闘服を、最高級の生地と技術を以て作成するプロジェクトが有志により始動したわ」

「……戦闘服」


なんと心踊るワードであろうか。


「一週間後に、仕様を決める会議をここでやるからそれには出席してね」

「……ん、私がやっとくから翔は訓練に集中して大丈夫」


澄火が目をキラキラさせている。どうやら、やる気マックスのようだ。


「……ああ、任せた」


一体どういう結果になるのか、一抹の不安がないでもなかったが、俺は相棒たる澄火に任せることにした。


「……じゃあ、そういうことで。報酬は以上ね。お金に関しては、もう振り込んだから確認してね」

「ありがとうございます」

「ああ、それとエルヴィーラ王女から、来月あたりに島で遊びましょうとのお誘いが来てるわよ。詳しいことはエルヴィーラ王女と話し合って頂戴」

「了解です」


来月か。楽しみだ。


「……ん。多分他にも来る人がいるから、そのつもりで手配お願い」

「オッケー。……それにしても、まさかこの短期間で序列にまで上り詰めるとは思わなかったわ」

「もうすぐ制度自体が消滅しますけどね」

「ふふふ。まあね」


熊川さんはぱたんとノートパソコンを閉じる。


「……それで、これは提案……というか、お願いなんだけど」

「なんです?」

「バクに、会ってくれない?」

「……バクに?」


黒子ビハインドザシーン所属特級戦闘員、コードネーム『爆破』。

なぜ彼女に俺が?


「何故です?」

「会ってみればわかるよ」


謎めいたセリフを言うと、熊川さんは立ち上がった。


「ついてきて」

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