第2話 ランク制度

「どちらかといえば『電脳』の方が好きなんだけど、私」


これまでですます調を保っていた熊川さんの口調が崩れる。


「いいじゃねえか、『支配者』。なんなら『ルーラー』ってルビを振るのも良さそうだな」


確かにかっこいい。

澄火も心なしか頷いているような気がする。


「……まあいいわ。それで、対策……というか協会の改革案ね。ランク制度というのを新しく作る予定よ」

「……ランク制度?」


と、『円環』。ローブで身を隠していて、要望すらわからない人物だ。

ただ、今の声から察するに、おそらくは女性である。


「まずは、普通の……つまり、序列入りしないレベルの探索者をA,B,C,Dランクに分ける。そして、序列入りレベルをS,SS,SSSに分類するわ」

「……ふむ。人数比は?」

「SSSは1人。SSは10人。Sは、変動。そういう形でどう?」

「そうなると、こいつ天使がSSS、俺から、『浮世』までがSS、『龍虎』から『紫電』までがSって感じか?序列はどうする?」


と、炎人。『浮世』、『龍虎』はおそらく序列十一位、十二位の探索者の異名だろう。


「序列制度は廃止。元々あまり意味のある制度ではなかったわ」

「……なるほどな。いいんじゃねえか?俺を含め、SSSになりたいっていうやつは山ほどいるだろうし、序列を消しても問題はないだろ」

「そうだな。賛成だ」


と、『正負』。


「それで、具体的には何が違うんだ?その、SABCDで」

「まず、S以上のランクにはこの会議と同等の会議に参加できる。他には、データベースから情報を得られる程度であったり、あとはクエストの配分なんかで差をつける予定よ。他に質問は?」


特にその後は質問は出なかった。


「……では、決を取りましょうか。『天翔』にも、投票権はあるわ。ランク制度創設に賛成の者」


ほぼ全員の手が上がる。

特に序列制度へのこだわりはないようだ。


「では、決まり。詳しい内容は、後々に告知するわ。今日の会議は以上。お疲れ様。二人は、報酬の話があるから残ってね」


と、会議が終わる。やはり皆忙しいのか、終わるや否や、談笑することもなくさっさと部屋を出ていった。


俺らは連れ立って、熊川さんのそばの椅子に腰を下ろした。

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