第1話 異名

「別にいいだろ?『不吉』。お前も気にってるじゃねえか」

「それはそれ、これはこれです」


どうやら不吉な人物は、そのまんま名前を『不吉』というらしい。


「では、現在の序列を含めた、今回の出席メンバーはこちらです」


序列一位『天使』

序列二位『炎人』

序列五位『不吉』

序列十位『愛』

序列十八位『死帝』

序列二十四位『炎刀』

序列二十八位『円環』

序列三十五位『魔法』

序列四十一位『瞬剣』

序列五十二位『正負』

序列六十位『天翔』

序列六十一位『紫電』

司会進行役 熊川麻奈


『炎刀』は咲良さんの二つ名のようだ。今ここにいるメンバーの中では、最も位が低いのが俺たちである。


……これが、日本が誇る強者たちか。


俺はぐるりと円卓を見回す。


「……んで、次がこの前の事件の報告、それに伴う新しいランク制度の創設……だったか?」

「ええ。まずはこの前の事件の報告からさせてもらいます。最初に、事件発生地であるオークション会場についての説明を」


そういうと、熊川さんはディスプレイにパワーポイントを映し出す。


「7/21から23、オークションを

ホテル・グランドクリスマスで開催。そしてその三日目、オークションが終了した直後、会場を解放者と黒子ビハインドザシーンの連合が襲撃をかけた」

「あの対極にあるような二つの組織が手を組むとは」


と、『正負』。やせぎすった、スーツにメガネといった装いの男だ。


「ええ。その結果、探索者の死亡101人。うち序列入り35人」


俺は衝撃で言葉を失った。


……死んだ?序列入りが……それも35人も?


「ま、言っちゃなんだが、一種の選別とも取れるんじゃねえか?」

「それはあまりにも楽観すぎるだろう、『炎人』」


と、咲良さん……いや、『炎刀』。


「そうか?……ま、これは俺なりの解釈だ。生き残ったからそうと言えるってとこもあるだろうしな」

「……続けます。次は敵陣営の死亡者について。黒子ビハインドザシーンの死亡者数、推定215人。捕縛、ゼロ。解放者の死亡者数、3110人。捕縛、161人」

「……甘く見積もって痛み分け……いや、両者敗北って感じ?」


と、『魔法』。パーティ『マジックユーザー』のリーダー、白井里奈さんだ。


「そうだな。こっちも最高戦力は無事、あっちもリーダーや切り札は出してきてない」


と、『正負』。


「だとしてもキツイのはこれからだ。現役探索者が大きく減った……補充も容易じゃない。引退者を持ち出そうにもな」


『炎人』が天を仰いだ。


「めんどくせー……なんかあんだろ?『支配者』」


……『支配者』?


熊川さんはとても嫌な顔をした。

どうやら、『支配者』というのが熊川さんの異名らしい。

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