第5話 魔法陣

美味しい夕食を食べ終わり、片付けも済んだところでいよいよお宝&プレゼントの開封のお時間である。


俺たちはお宝が置いてある部屋に移動し、まずはオークションで落とした品から検証を始める。


まずは、俺が落としたスキルスクロールからである。


スキルスクロールというのは、その名の通り使用するとスキルが得られる巻物のことである。使用方法は簡単で、ただ巻物を開けばいいだけだ。


大抵は巻物の装飾から、そのスキルがどんな性質のものなのかがわかるらしい。……が、これはそんな装飾が一切ない。

どんなスキルが得られるかは全く不明である。まあ、だからこそ消費されずに済んだという側面もあるのだろうが。


「……早速使ってみるか」

「……ん」


俺はスキルスクロールを開く。ジジジジジと俺のMPを結構な量吸い取りながら上の方からスクロールが焼けていく。

数十秒後、灰すらも残さずにスクロールは焼失……消失した。


これで念願のスキルゲットである。

尤も、ダンジョンの外ではステータス画面が開けないため、手に入れたのが一体なんのスキルかは分からないが。


お次は、澄火が落札したガラクタの数々である。


内訳は、謎の古文書×1、何をやっても落ちない汚れがついたペンダント×2、謎の瓶×3、銃×1 、眼球×1 。


まず澄火が手を取ったのは、古文書である。一枚一枚の紙が辞書のような薄さ。

しかし、かなりの剛性を持っていることが、一切折れ曲がったりしていないことから伺える。


そんな現代では再現不可能な技術で作られたと思わしき紙には、見たこともないような文字がびっしりと書かれている。


「……どうするんだ?それ」

「……ん」


澄火はぺらぺらめくっていく。その眼は忙しく巡っているので、ステータスを生かして即読しているのだろう。


一回全てのページを読み終わり(あるいは見終わり)再びもう一度読む。そしてもう一回。その動作を5回ほど続けたあたりで、異変が生じる。


「……なんだ?」


古文書に書かれている文字が浮かび上がっていき、空中に黄金の線で図形を作っていく。

よく見ると、線はそれぞれ文字が連なってできていることがわかる。


それらは重なり合い、あるいは組み合わさり、空間図形を形作っていく。


そして、一つの複雑な立体魔法陣とでも呼ぶべきものが完成した。


それらはクルクルと回転しながら縮小していき、小さな平面の魔法陣へと変化する。


澄火がそれに向かって左手を伸ばすと、魔法陣は消失して、伸ばした手の甲へと魔法陣が焼きついていく。


「……ん」


痛みがあるのか、澄火が不快そうに眉を寄せる。


数秒後、澄火の手の甲に、一つの魔法陣が刻まれてすうっと姿を消した。

多分、表示/非表示を切り替えられるのだろう。

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