第4話 帰宅

俺は電車を乗り継ぎ、マンション“Star Elements”の最上階にある自宅へと戻った。


ドアを開けると、パタパタとエプロンをつけた澄火が出迎えてくれる。


「……ん。おかえり、若くん」

「ただいま、澄火」

「ご飯もうすぐできるから、座って待ってて」


そういうと、澄火はぱたぱたとキッチンの方へと引っ込んでいった。


俺は靴を脱ぎ、寝室に荷物を置いてから、キッチンの隣のダイニングへと行く。


そして、ダイニングの隣の部屋に、俺たちが落札した総額85億円のお宝の数々が置いてあるのを発見した。


もう物品の引き渡しは終わっているようだ。澄火が後で一緒に調べようとして並べてくれたのだろう。


しばし落札したお宝たちに魅入っていると、澄火が大きいお鍋を持ってダイニングにやってきた。


真夏にお鍋というのもなかなか乙なものである。

俺はお宝が置いてある部屋を離れ、ダイニングの席についた。


澄火はお鍋をテーブルの中心にデンと置くと、次いで一本の大きな瓶とワイングラスを二つ持ってくる。


瓶の中身は、お酒ではなく超高級ジュースだ。なんでも、水上さんの個人コレクションの中からもらったのだとか。


後で調べたら、値段は“時価”ということが判明した。今は販売されていない幻の逸品らしく、その値段は時に億を越すこともあるんだとか……


ワイングラスの方は、来栖家の継嗣、来栖玲奈さんからのお礼の品の一つらしかった。


うっすらと紋様がおしゃれに浮き出ていて、底面には来栖家の家紋が西洋風にアレンジされて描かれている。


そのほかにも色々な人から贈り物が届いているようだ。例えば、美術館の館長からは部屋に飾るのにぴったりな美術品が届いている。


いくつかダンジョン産のアイテムもあるという話なので、後で調べてみることにしよう。


澄火はとくとくとジュースをワイングラスに注ぎ、こちらに一つ渡してくる。


「仕事の成功を祝って……乾杯」


澄火の音頭に合わせ、俺たちはグラスをそっと合わせた。


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