第3話 訓練
「……『天使』」
「こうして挨拶するのは初めましてですね。『天使』の二つ名を拝命しています、リリアと申します」
リリア……本名か?
「私は孤児なものでして、本当の名前は不明……おそらくありませんので。自分でつけた名前です」
「なるほど」
どうやら思考がそのまま顔に出ていたらしい。天使……リリアはそう解説してくれた。
「あなたに感謝を。あのままだったら、確実に私は周囲を壊滅させて勝利していたでしょう……その結果、この国を破滅に追い込むところでした」
「……感謝を受け取ります、ですから顔をおあげください」
自分と同年代(と思われる)の少女に頭を下げられるのは、かなり気まずいものがある。
「……それで、訓練?あなたには堕天の管理をして欲しいのだけれど」
「もちろん、そちらも行います。ステータスの差から考えて、私が戦闘不能になることはありません。……あの切り札も、そんなに簡単に使えるものではないのでしょう?」
「……ええ、まあ」
国……もしくは世界の危機でなければ使えない。流石にリリアとの戦いが国の危機にカウントされることはないだろう。
「では大丈夫でしょう。いかがです?」
「……やってくれるなら嬉しいわ。では、その方向で調整しておくわ。一応、それとは別に報酬も振り込んでおくから、確認しておいてね」
「……ありがとうございます」
「楽しみですね」
リリアはあまり表情が変化しないタイプなのか、わずかに口角を上げるにとどまっているが、かなりやる気まんまんであることが伝わってきた。
これは、スパルタ方式の指導を覚悟した方がよさそうだ。
「では、訓練は休息を待って5日後からのスタートといたしましょう」
そういうと、リリアは一礼して部屋から去っていった。
「そういえば澄火とエルヴィーラ王女ははどうしたんです?」
「エルヴィーラ王女は、この病院からすでに島へ向かっているところね」
なるほど。
本来は出国手続きがあるのだと思うが、その辺は不思議な政治力パワーでなんとかしたのだろう。
「澄火ちゃんは、先に帰宅したわよ。ご飯を作って待っている……って言ってたわ」
まるで若妻ね、という熊川さんの言葉を聞き流し、聞きたいことは全て聞けた俺は帰る準備を整える。
……とは言っても、手早く着替えていつものリュックを背負うだけだが。
「じゃあ、また何かあれば連絡するわ、頑張ってね」
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