第2話 報酬

再び目を覚ますと、隣に澄火はいなかった。どうやら、先に起きて抜け出したようだ。


体に力を入れると、今度は起き上がることに成功した。


「お、起きたね」


声がした方を向くと、そこには熊川さんがいた。忙しくパソコンを操作している。


「調子はどうかしら?」

「……ぼちぼちですかね」


熊川さんは一旦作業をやめると、こちらの方を向いた。


「今回は本当にありがとう。日本ダンジョン探索者協会として、感謝の言葉を述べさせてもらうわ」

「……いえ、澄火とエルヴィーラ王女のためにやったことでもありますし」

「それでもよ。何か報酬の希望はある?可能な限り叶えさせてもらうわ」


可能な限り叶える……日本ダンジョン探索者協会としての『可能な限り』である。

おそらく金を望めば恐ろしい金額が手に入ることだろう。


しかし、ここで金銭やアイテムを望むのは流石にもったいなさすぎる。


「…………だったら……訓練が受けたいです」

「……訓練?」


熊川さんが首を傾げる。


「ええ。今回のことで実感しました。俺の戦い方……特に剣術はなってない。基礎中の基礎さえ知らずにステータスで強引に使ってるから当たり前ですが」


抜刀術でさえ、おそらくやり方が違うものだと思われる。


「……なるほどね。そういえば以前、強くなりたいって言ってわね」

「ええ、まあ」


あの時の決意に今も変わりはない。


「どうしようかな……君の本気を受け止めても死なないレベルの探索者……で、訓練ができる……となると、自ずと序列上位に限られてくるのよね」

「……そんなですか?」


流石にそこまで俺は強いわけではないと思うが。


「序列入りなら真剣にやれば君と対等以上に戦う実力はあるわよ、そりゃね。ただ君に訓練をつけられるかといえば話は別なんだよね」


そういうものなのか。


「それに基礎を教えられる人でないと……どうしようかね」

「では、私などどうでしょうか?」


と、聞き覚えのある声と共に、部屋に真っ白な服を着た少女が入ってきた。


日本ダンジョン探索者協会序列第一位……『天使』だ。

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