第11話 介入

「……ん」


と、澄火が結界の中から出てきて、銘刀・紫電を渡してきた。

ありがたく受け取ると、澄火はそのままぎゅっと抱きついてくる。


澄火の落ち着く匂いが、俺の戦いで少し荒んだ心を癒してくれる。


「ちゃんと帰ってきて」

「わかってるよ、相棒」

「……ん」


澄火はそれだけ言うと、俺から離れてひょいっと結界の中へと戻っていった。


「……ふふふ。素晴らしいパートナーシップですわね」

「……エルヴィーラ王女」


代わりに出てきたのは、エルヴィーラ王女だった。傍には、球形の物体がふよふよ浮いている。

見覚えはないが、おそらくは身を守るアーティファクトなのだろう。


「止めても行ってしまわれるのでしょう?せめて、これだけは持って行ってくださいな」


そういうと、エルヴィーラ王女は一つの宝石を渡してくる。


「身代わりの宝珠……と呼ばれるものですわ。致命傷を一回だけ防いでくれるものです」

「……そんな貴重なものを……ありがとうございます」


俺は大切にそれをポケットへと入れる。


エルヴィーラ王女は最後に美しいカーテシーを決めると、結界の中へと戻っていった。


「……死ぬわよ」

「死にませんよ。死ぬ気もありません」


俺は銘刀・紫電を納刀したまま構える。


「そう。……せめて、これだけはさせてちょうだい」


そういうと、熊川さんは俺に杖を向けて何事か唱える。


すると、先ほどまであった疲労感が綺麗に抜け去った……いや、むしろ戦闘前より調子がいいような気さえする。


「ありがとうございます」


俺は空で戦闘を繰り広げる天使と堕天を睨む。


加速装置・制限解除インフィニットアクセル


ステータス出力を限界まで高め、俺はニャルトラ・ステップを使って音速をはるかに超えるスピードで空を駆け上がる。

そして、ある程度の高さまで上がったところで、澄火の銘刀・紫電の力を発動させ、さらに速度を上乗せする。


そして、俺は堕天の背後へと跳んだ。


––––閃撃・終 


堕天の意識は天使に向けられているため、俺に対応することはできない。


しかし……斬撃が当たっと思った瞬間、澄火の銘刀・紫電は、粉々に砕け散った。


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