第9話 堕天

 ……堕天?聞いたことの無い名前だ。


「よく知ってんな」


“堕天”と呼ばれた少女は手に一振りの直剣を生成する。

夜の闇より暗い、漆黒の直剣。堕天はそれを肩に乗せると、羽をぶわっと広げる。


「んじゃまあ……いくぜ?」


堕天はそういうと、ふっと掻き消えた。


––––閃撃……


俺は加速装置・制限解除インフィニットアクセルを起動し、抜刀術でおそらく突進だと思われる攻撃を迎撃しようとする。


キイン……


耳鳴りのような音が響いたかと思うと、俺の視界を真っ白な羽が覆い尽くす。


「間に合いましたか。まさかあなたがこんな馬鹿げたテロに関わっているとは思いませんでしたよ」

「参加を決めたのはついさっきだよ、そろそろ決着をつけておくべきだと思ってな」

「……そうですか」


衝撃破が俺の眼前で発生し、俺は吹き飛ばされる。


「うっと」


と、水上さんが受け止めてくれた


「結構なメンツが足止めをしてたと思うが……まさかこの短時間で超えてくるとはな!」

「全員今頃は眠っていらっしゃることでしょう。あなたも直ぐにそうなりますよ」

「言うじゃねえか」


俺の前で剣を受け止めた少女は、一度俺たちを助けてくれたことがある––––日本ダンジョン探索者協会の序列一位、“天使”だ。


手には、堕天が持っているものと正反対にどこまでも白い純白の直剣を携えている。


初めてその姿を直接見たが、高いステータスもあってか非常に美しい。

見るものを自然と畏怖させるどこか神聖なオーラを纏っている。


天使は無言で堕天にラッシュを仕掛ける。どの一撃も、凄まじい精度と重さを持っているが、堕天は軽々とそれらをいなす。


「そんなものか!?」


堕天はそういうと、剣に漆黒の禍々しいエネルギーを纏わせる。

天使も呼応するように、純白の神々しさを感じさせるエネルギーを剣に纏わせる。


そして一瞬の後、剣が交錯した。

漆黒のエネルギーと純白のエネルギーが干渉し合い、周囲に衝撃波が発生する。


それを嫌ったのか、天使は宙に打ち上げるような攻撃を放つ。


「空中戦ってか?」


堕天はそういうと、自分からヒョイっと飛び上がる。天使も追いかけるようについていき、そして天球の頂点で再び剣が交錯した。


先ほどとは違ってなんの障害もないからか、ここまで衝撃波が届くほどの衝突が強い。


そのまま、上下左右に空間を自由に使った戦闘が始まる。


まるで一つの芸術のような戦闘。加熱する戦いの中、使われるエネルギーもどんどんと高くなっていく。


そして、ついに双方のユニークスキルが本格的に使われ始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る