第8話 合流
そのままビームを収束させて撃ち抜く。
すると、かしゃあんという音がして、ホテルの半径200mほどを覆っていた結界が粉々に砕け散り……そして世界が夜へと転ずる。
結界内部に結界の要となる力場が存在していたということは、先遣隊が来たタイミングでセットされたものなのか、あるいは……内部に手引きしたものがいるということか。
後者は、あまり考えたくないものだ。
何故なら、手引きした人物がいたとすればそいつは澄火の結界の中にいる可能性が高いからである。
結界はどうやら作成時の外の景色をそのまま映し出すという効果も持っていたようで、俺は初めて外の状況を見ることができた。
結界の外では予想通りというべきか、探索者と組織に所属する者たちの乱戦が起こっていた。
俺は紅刀を納刀し、抜刀術の構えを取る。
––––閃撃・繚乱
俺は加速した世界で、戦っている
俺の動きを明確に捉えていたような猛者もいたようだが、目の前の戦いに集中しているため、対応することはできない。
「ぐはっ」
加速が終わり元の場所に戻り、俺は血反吐を吐いた。同時に、無理やり塞いだ傷口から血が吹き出してくる。
戦闘に次ぐ戦闘で、
それに、バクとの戦闘での負傷……流石に、。肉体を酷使しすぎたようだ。
普通なら死んでいてもおかしくないくらいの傷だが、戦闘によって上昇したステータスでなんとか持ち堪えたようだ。
「若槻くん……無茶したね」
「……熊川さん」
俺のそばに、熊川さんが降り立つ。
上空には、エルヴィーラ王女が日本へ来る時乗っていた航空機が、シールドのようなものを展開して浮いていた。
おそらくエルヴィーラ王女がなんらかの方法で遠隔操作をして熊川さんを運んだのだろう。
「……回復せよ」
熊川さんがそう祝詞を唱えると、俺の傷が癒えていく。回復してもらうのは、これで三度目と言ったところか。
「君のおかげで外の戦線は片付いた。序列入り探索者の連絡が少ないのは気がかりだけど……でも、状況は解決しつつある」
「そうだな」
と、宙にシュバっと出現した水川さん。どこかからテレポートしてきたようだ。
「お前にゃ、何か報酬が必要だな。……こいつは後で回収させるか」
氷漬けになっているバクを指して、水川さんがそう言った。
「へえ。もうこんな壊滅状態なんだ。骨がないね、黒子……それに解放者」
と、不意に、空中に黒い翼を持った少女が出現した。
「……堕天?」
熊川さんが、顔に恐怖を張り付けてそう呟いた。
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