第7話 vsバク
「ぐっ」
焼けつくような痛みが走る。
俺は腕輪から紅刀と蒼刀を取り出して、傷口を焼いてから凍り付かせる。かなり強引だが、止血処置だ。
「へえ。心臓を貫いたつもりだったのに」
「狙いが悪かったんじゃないか?」
「一応解説しておいてあげる。爆発のエネルギーは通常、全方位に拡散し、一方向に収束させることができない。でも……」
「爆発で爆発を覆ってやれば、エネルギーを一方向へと撃ち出すことが出来るってわけか?」
「……ふん」
解説を遮られたバクが不満そうに鼻を鳴らす。
「それで?MPの回復のための時間稼ぎは終わりか?」
「ええ。そして、あなたの寿命もね!爆縮!」
予測していた俺は宙へ飛んで回避し、ビームを撃ち込む。
バクの『爆縮』には、爆発を爆発によって囲み一方向に収束させるという複雑な工程を必要とする。
故に……
「絶えず自分の位置を変更させられたら、爆縮を撃てない。そうだろ?」
おそらく爆縮で利用する爆発も連鎖によって生み出したものだ。ということは、バクの位置をずらしてしまえば、その爆発も無意味なものになる。
「……ふん」
俺は一つ一つ軌道を変えたビームで、バクに回避行動を強要する。
ユニークスキルによって上昇したMP最大値を活かし、全ての一撃が勝負を決めうるそれである。バクは回避するしかない。
「……うざったい!」
バクの苦し紛れな爆発も、即座にアム・レアーの拡散射撃で打ち消す。
「ははは」
空をニャルトラ・ステップで飛び回り、ひたすらにアム・レアーを打ち込む。
傷を負ってハイになっているからか、思わず俺の口から笑い声が溢れる。
「ははははは!」
全ての知覚が広がっていく。
聴覚が全方位の視覚を獲得し、触覚が空気の振動から聴覚を獲得する。
味覚と嗅覚が、あらゆるものの場所を教えてくれる。
そして、視覚は拡張され、どこまでも見通せる。
「ははははははは!」
心地よい全能感と共に、俺はバクへとアム・レアーで攻撃する。
「……爆縮!」
それでもなんとか爆縮の発動にこぎつけるバク。しかし、それは悪手だ。
その隙は、俺があえて作り出したもの。
「
発動タイミングさえ分かれば、例え俺の動きより速い攻撃だとしても容易に回避できる。
俺はステータス出力をを限界まで高め、バクの側へと飛ぶ。
そして蒼刀で腹を貫いた。
「ぐふっ!」
バクが鈍い悲鳴を上げるが、俺は気にせずに蒼刀の力を発動させ、バクを凍り付かせる。
急速に体温を奪われたバクの意識が、ぷつりと切れたのを感じる。
ステータスの力があるので、死にはしないだろうが、当分は動けないはずだ。
擬似的な仮死状態といったところだろうか。
俺は蒼刀を刺さったままで放置し、辺りを見渡す。
随分と凄まじい惨状になっているが、ある一定のところからは破壊されていない。おそらく、あのラインに結界があるのだろう。
俺は戦っている最中に気付いた、結界の起点のようなものにアム・レアーの照準を合わせた。
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