第5話 バク

ずん。


鈍い音を立てて、反射的に跳躍した俺の下を爆発が貫く。


「あっは!君勘がいいね!」


ステータスが上がったせいだろうか、なんだか今日の戦闘ではやけに勘が冴え渡っている。


「そうみたいだな」


俺はアム・レアーを展開する。

バクに近づいたら、あの爆発で粉々にされてしまいそうだ。ここは、遠距離戦を挑むのが得策だろう。


ちょうど、試したいこともある。


「いくぞ」


俺はMPを注入し、ビームを四つ––––一機一発ずつ––––発射する。


「ふうん。面白いね」


しかし難なくバクは身を翻して四本全てのビームをかわす。


よく狙撃手は逃げるために敏捷性が高いと聞く。例に漏れず、バクも同じ類のようだ。


やはりビームは動きが直線だからか、あっさりと避けられてしまうようだ。


「ならばこれでどうだ?」


今はもう俺の知的領域に溶けて消えてしまったので閲覧できないが、アム・レアーの説明書には「空中に浮かぶ、四位一体の個人用ビーム兵器」との記載があった。


正直言って、今の俺は補助的にしかアム・レアーを活用できていない。

大体が、雑魚敵の処理や、敵に乱射して撹乱したりといった使い方だ。


エルヴィーラ王女曰く、俺が身につけているアーティファクトは最も価値の高い「超古代文明」の

武器ではなく、兵器だ。

確実に、俺に引き出せていない、兵器の名にふさわしい力があるはずだ。


俺はアム・レアーにMPを込める。


「収束……曲!」


アム・レアーから、細く短いビームが発射される。


「何度やっても変わらないよ!破!」


俺は飛び退く。一瞬の後、俺のいた場所がピンポイントで爆破される。


……遠距離でも爆破のスキルを起動できるのか?


そのまま、俺を追いかけるようにして……そして、俺が逃げそうなところからも爆破の連鎖が起こる。


チラリとバクの方を見ると、爆破を操りながらひらりと身をかわしてビームを避けている。


「……甘い!」


ビームが先ほどとは違い、クンッと曲がり……そして、バクへと着弾した。


ズドンと小気味良い音を立てて弾が爆発する。


バクは先ほどの攻撃を全て紙一重で避けていた。

その癖と、初めのビームで真っ直ぐにしか飛ばないと思い込んだ思考を利用した一撃だ。


「……ちょっと危なかったね」


しかし、バク自身への有効打とはならなかった。

しかし、つけていたネックレスがない。おそらくだが、身代わりになったのだろう。


「…………」


もう弾を曲げただけで当たることはないだろう。何か一工夫を攻撃の中に織り交ぜる必要がある。


「……楽しい戦いになりそうだ」

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