第4話 状況報告

水上さんは二十もの分身を常時出現させつつ、忘剣に連撃を叩き込んでいく。


おそらくだが、水上さんのユニークスキルは「テレポート」あたりだろう。対象はおそらく自分だけ。その代わり、この会場に突如現れた通り、跳べる範囲はかなり広そうだ。

サブ能力––––もしくは通常スキル––––で残像、もしくは幻影を生み出し、行動を読みにくくしているのだろう。


「……これが、瞬剣」

「……強いだろ?」


いつの間にか連撃は終わり、水上さんは俺の横に立っていた。

忘剣は、パシャリと赤い液体になって溶ける。


どうやら、敵のワープスキルによってこの場を去ったようだ。


「んじゃ若槻……状況を報告してくれ」

「はい」


俺は会場の壁が破られてからのことを思い出しつつ水上さんに報告する。


「会場に突如扉と一つの人影が現れました。人影を斬ったところ、赤い液体になって消えました」

「ふむ……人影はおそらく黒子ビハインドザシーンのワープスキル持ちか。そんで……赤い液体の方は、解放者のやつだな。……全く、まさか連携して攻めてくるとはな」


解放者と黒子ビハインドザシーン……熊川さんの話を聞いた限り、黒子ビハインドザシーンは依頼がないと動かないという話だった。

その黒子ビハインドザシーンが解放者と動いているということは……解放者からの依頼があったということか?


「澄火が結界をはって会場を守り、その扉から現れた先遣隊は全員斬りましたが、その後あの三人が現れ……と言った感じです」

「ふむ。若槻がいなきゃだいぶ大変なことになってたな。何せ、外の警備は結界で締め出され、さらに通信も通じない状態だ」


通信と人の出入りが遮断されているのか……


「ま、そこまでわかれば序列入りを動かせる……ちょっと言ってくるから、会場を頼むぞ」


そういうと、水上さんの姿がふっと消えた。

ユニークスキルでどこかへ跳んだのだろう。


俺の気が緩んだその瞬間……爆発が起こり、ホテルの2階から上が吹き飛んだ。


この大規模テロに似つかわしくない、美しい星空が露わになる。


東京の中心部にあるこんな場所でこのレベルの星空が見えるということは、大規模な停電が起こっているのだろう。


「空を見ている場合?」

「余裕の表れだよ」


俺は声をかけてきた、宙にぷかぷか浮かんでいる15歳ほどの少女の方を見る。


こいつがホテルを––––おそらく、中にまだいた人ごと––––吹き飛ばした犯人だろう。


黒子ビハインドザシーン所属特級戦闘員、コードネーム『爆破』。気軽にバクちゃんとでも呼んで欲しいな」

「……パーティ“Colors”所属、若槻翔」

「ふーん」


バクはとくに興味もなさそうにそう呟いた。


「じゃ、いくよ」

「他の奴らはいないのか?」

「いないよ。探索者を止めるのに結構な人員を使ってるし……それに……邪魔だからね!」


満天の星の下、ラウンド2が始まった。

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