第1話 忘剣
忘剣。
かつて対峙した時は、剣の傷を修復したり、あるいは「見えざる手」によって敵を吹き飛ばす技を使ってきた。
俺は反動を活かして一旦離脱し、空中を蹴ってアム・レアーを起動する。
「はあ!」
アム・レアーの乱射と共に、2回宙を蹴ってフェイントを入れつつ両手に持った刀で切り付ける。
ギャインと耳障りな音がして、俺の刀と忘剣の剣が衝突した。
「相変わらずなってない戦い方だね……多少ステータスは上がったみたいだけど」
「……ふん」
俺は刀にMPをこめる。冷気と熱気が二刀から漏れ出していく。
異変に気づいた忘剣が後ずさろうとするが、もう遅い。
刀から出る炎と氷が、目の前の空間を蹂躙した。黄昏時のほの暗い空間を、眩しい光が照らす。
「甘いよ」
「でも切り札の一つは使わせた」
おそらく使ったのは見えざる手か?氷と炎は見えない何かに阻まれ、忘剣に届くことはなかった。
「今度はこっちからいくよ」
ふっと掻き消える忘剣の姿。
ずん……という音がして、俺の周囲の空間が爆発を起こす。それに紛れるようにしてやってきた忘剣の斬撃を回避し、俺はカウンターの一撃を入れる。
「計算通りだよ」
「それはどうかな?」
二の矢で鋭い蹴りを入れてくるが、俺はそれをカウンターを入れた方でない刀でブロックする。
「……くっ」
パワーはあちらの方が高いのか、俺に若干のダメージがくる。……が、この程度なら許容範囲内だ。
さて、どうしようか……現状、全く攻撃が通るビジョンが見えない。
俺の切り札である「ムラクモ」は今の状況ではおそらく起動しないような気がするし……澄火の銘刀・紫電を使った攻撃も今の状況だとできない。
おそらくこの会場の外ではここに入ろうとしている序列入り探索者や、中に侵入しようとする組織から会場を守る探索者が戦闘を繰り広げていると思われるので、そちらの助けを待つのも一手ではある。
「……いや、それはないな」
俺にもプライドというものがある。
このまま何もせずにただ助けを待つのは、俺の主義に反する。
俺は刀を納刀し、抜刀術の構えをとった。
「ほう?」
––––閃劇・終
こちゃこちゃした技は、大きな得物を自在に操り、さらに切り札をたくさん持つであろう忘剣には通じにくい。
ならば、俺の最速の一撃でケリをつけてしまう!
「狙いが甘い」
忘剣はあっさり受け止めるが、それで終わりではない。俺のほぼ全MP(それが実際今いくつなのかは知らないが)を熱に変換した紅刀が、豆腐の如く大剣を切り裂いていく。
そして、ざしゅ!と忘剣の腹を切り裂いた。
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