第9話 落札!

さて、いよいよ三日目である。


エルヴィーラ王女曰く、最も面白いものが出品されるのが三日目らしい。その詳しい内容はというと……


「さて、いよいよみなさんお待ちかねのオークション最終日がやってまいりました。本日は日本ダンジョン探索者協会所属鑑定者の、わたくし杉山理香がお送りいたします。どうぞよろしく」


オークションだというのに、なぜか白衣で登場したその女性はそういうちぺこりと頭を下げた。

なんだか、これが私の正装なのだ!という激しい自己主張を感じる。


「本日のテーマは「謎の品」でございます。世界のダンジョンより集められた、私のユニークスキルを以ってさえ全てを見通せない謎の品々……そちらを今日一日中かけて紹介させていただきます。では、まず一品目はこちら」


壇上に見えるのは……三つの鍵?


「こちら一揃いと思われる三つの鍵。どこで使うのか、何に使うのか……名前さえわかりません。ですが鍵がある以上鍵穴が世界のどこかに存在するはず。その向こうに何が待っているのか……確かめたくはありませんか?」


確かにわくわくするし、やってみたいが……あまりにも途方もなさすぎる。


「ふふふ。あの品々、落札しておくことをお勧めしますよ」


耳元でエルヴィーラ王女が囁く。

……彼女のその美しい瞳には一体何が映ったのだろうか。


「最低落札価格は500万円からです。では、入札開始!」

「500万」


考える間もなく落札が始まってしまったが、エルヴィーラ王女が勧めるなら落札して損はないだろう。

そう考え、俺はやる気を示すべく、一番に手を挙げる。しかし、俺がつけた値段はすぐに他の人に上書きされてしまう。


「一千万」

「一千五百万」


仕方ない。


「五千万」


だいぶ使うのが怖い金額だが、早めに勝負を決めないと最終的に支払う金額が高くなる恐れがある。

俺はそう考え、一気に値段を釣り上げていく。


「六千万」

「一億」

「おっと、ここで一億が出ました!」


もちろん一億を出したのは俺である。

これで終わるかと思ったが……そうは甘くはなかった。


「一億二千万」

「……一億三千万」


どんどん値段が釣り上がっていく。


その結果。


「それでは、十五億八千万円での落札となりました!」


……うーむ。凄まじい金額だ。


ともあれ、落札することには成功した。


「ふふふ。おめでとうございますわ」

「……ありがとうございます」

「では、落札された方に挨拶をお願いします」

「……えっ」


完全に、忘れていた。

1日目は商品の数が多いためなかったが、昨日からは落札者の挨拶があるのだ。

世界中のVIPが集まるこの空間で発言することには大きな価値があるため、落札価格に拍車をかけているのだ。


「どうしよう……」

「ふふふ。ここは臨時の主人あるじとして、サポートして差し上げましょう」

「……何から何まで、ありがとうございます」

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