第8話 腕輪

2日目はそんな感じで、とても人類には理解し難い思想で創られた絵画や彫刻などの美術品や、アイテムボックスや靴といった実用的な品々が扱われた。


部屋に戻り、エルヴィーラ王女は俺たちに一つずつ、腕輪を差し出した。


「これは?」

「ふふふ。今即席で生成したアーティファクトですわ。効果は、亜空間に物を収納する……というものです。もともと作ろうと思っていたのですが、情報が足りなくてなかなか実現できず……ですが、今日のオークションでアイテムボックスを解析できたので、こうして作れた……というわけですわ」


ひょっとしてこれ、量産できたりするのだろうか……


「その心配はありませんわ。かつてオークションで落札したり、あるいはダンジョンで見つかったものを購入したりして手に入れた壊れたアーティファクトのかけらから生成したものですので」

「……なるほど。そんな貴重なものを、ありがとうございます」

「ふふふ。友誼の証……あとは、短剣のお礼として受け取ってくださいまし」


俺は頭を下げて、澄火と共に腕輪をつける。試しに持ち歩いている紅刀・蒼刀、そしてムラクモを収納してみる。

しゅんとアム・レアーと同じような挙動で、武器類が一瞬で消失する。

再び紅刀を出そうとすると、手の内に一瞬で現れた。慣れて仕舞えばシームレスに操作することができそうだ。


「島の設備がないので、改良等はまだですが……いずれ、島にいらした時に必ず。ですので、またいらしてくださいね?」

「はい、ぜひ」


約束を取り付けられてしまった。

これから夏の季節である。あの島でゆっくりしてみるのも悪くないだろう。


「ふふ。では、そういうことで。ところでオークションの最終日についてはご存知ですか?」

「最終日?」


特に何も聞いていない。何かイベントがあったりするのだろうか?


「オークションで最も面白いものが出品されるのが、最終日なのですよ……ですから、例えば若槻さんが出品なされたあの宝石のように特に価値があるものでなければ、高い値段が付くことはないのですわ」


高い値段がつくことはない?


俺は今日の落札価格を思い出す。

凄まじい国家予算にも匹敵するような金額が動いていたような気がするが……


「ふふふ。明日になればわかりますわ。そうですわ、来栖さんに挨拶に行かなければなりませんね……ローズ、アポイントを頼みます」


本当は俺たちだけでいくのが筋なのだろうが、俺たちエルヴィーラ王女のそばを離れることができない。

なので、エルヴィーラ王女が挨拶しにいくという形をとっているのだろう。


どこまでも気遣いのある方だ。

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