第3話 データベース
「ダンジョンの中の扉……その先にある、異世界ですか……」
エルヴィーラはじっと考え込むような仕草をする。
「ええ。こちらがその世界で手に入れた短剣です」
俺は懐から、あの世界で手に入れた黄金の短剣をエルヴィーラ王女に差し出す。
王女は受け取って鞘から引き抜き、観察する。
どうやらユニークスキルも発動しているようで、瞳の中で未知の文字が煌めいている。
「“力”が宿っているのは感じますが……詳しいことは、島で本格的に解析しないとわかりませんわね……」
思わず見惚れてしまった俺は、エルヴィーラ王女の声で我に返った。
「よければ差し上げますよ。私たちが持っていても意味のないものですし」
「あら、いいんですの?」
エルヴィーラ王女は嬉しそうにそういうと、短剣をローズさんに渡す。ローズさんはそれを布で包むと、バッグの中へとしまう。
「ではお礼に……私の中のデータベースから情報を引き出してみましょうか」
そういうとエルヴィーラ王女は瞑目する。
「……ダンジョン……中……扉……絞り込めない……だとしたら、Keyはやはり異世界?アーティファクトとの関連性が多い……いえ、むしろこれは排除……」
高速で何事かを呟き続けるエルヴィーラ王女。数分ほどそうした後、エルヴィーラ王女は顔を上げた。
「結論から言うと……ダンジョンには、かつてなんらかの関わりがあった異世界とこの世界を繋ぐ力がある……ということですわね」
「……なるほど?」
一体その情報がどこからきたのか気になるところだが、俺は一旦エルヴィーラ王女の話に耳を傾ける。
「ダンジョンは元々ある世界の知的生命体によって創造された、世界接続機……その成れの果て。そのつなぎの印となるものが必要……らしいですわ」
「つなぎの印……」
俺は一つ、心当たりがある。
本来はこちらは見せるつもりはなかったが……
俺は刀袋から「ムラクモ」を取り出す。
「あつっ!……弾かれましたね」
一瞬だけ先ほどと同じようにエルヴィーラ王女の瞳に文字が浮かぶが、エルヴィーラ王女は何かに弾かれたように顔を背けて目を押さえる。
「……大丈夫ですか?」
「ええ。大したことはありませんわ……どうやら私の
ムラクモ……日本神話に出てくる天叢雲剣––––草薙剣と何か関係があるのかもしれない。
もっともその場合、もともとこちら側にあったものなのか、あるいは向こう側にあったものが過去にこちらの世界に出現したことがあるのかはわからないが。
「相当に強力なようですわね……」
エルヴィーラ王女は解析をしたそうだったが、俺は刀を袋に入れて封印する。
世界に……あるいは国に危機が迫った時のみ抜くことが可能な刀。
使う機会がないことを祈ろう。
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