第11話 紫電

「ちっ!」


咲良さんは舌打ちをすると、ドラゴンの一体に飛びかかる。俺はもう一体は任されたものだと解釈して、澄火と共にもう一体の対処にあたる。


澄火の電撃を身に纏い、ニャルトラ・ステップで宙を蹴って空中へ。そのまま、ドラゴンの鼻面に向けて蹴りを繰り出す。

どうんと砲弾が着弾したような轟音を立てて爆発が起こる。


しかし、ドラゴンは全くの無傷だった。俺たちが以前戦ったドラゴンとは格が違うようだ。


咲良さんも、相手に手間取っているようである……と、俺はドラゴンの口に光のようなものを感知した。

俺は反射的に加速装置・制限解除インフィニットアクセルを起動して退避する。澄火は雷に変化して俺に纏う。そんな使い方もあったのか……

そしてその瞬間、俺たちがいた空間をレーザーが薙ぎ払った。


俺のアム・レアーとは桁違いの威力であることが本能的にわかるレベルの攻撃だ。

かすっただけでかなりの負傷を負うことになるだろう。


ぐぐぐっと首が回転したので、澄火を抱いたまま加速装置・制限解除インフィニットアクセルを維持したまま回避する。

ミシミシと身体中の骨が軋む音がするが、気にしてはいられない。幸いにも、周囲に建物は存在しないため被害はあまりない。


俺たちにヘイトが向いているめ、今向かってきている探索者や自衛隊、警察にも被害は出てないようだ。


「どうするか……」

「ん。ちょっと待ってて」

「……え?」


澄火はそういうと、体中から電撃を放ち始める。


「澄火?」

「……はああああああ!」


一際大きい紫電が迸ったかと思うと、澄火は心臓から何かを掴む。そのまま、ずずずずずと引き出してくる。


現れたのは、澄んだ輝きをもつ、ほのかに紫がかった一振りの刀だった。

表面からはパチパチと火花が上がっている。


「……ん。銘刀・紫電。使って」


澄火はそういうと、刀を俺に託してくる。


「ありがたく使わせてもらう」


俺が刀を手に取ると、右腰に鞘が生成される。これで、戦闘力は格段に上がった。


「さて」


俺は一旦刀を納刀し、意識を集中させる。


「閃撃・終」


加速装置・制限解除インフィニットアクセルを起動し、抜刀術を放つ。

さっきニャルトラ・ステップで傷一つつかなかったドラゴンの皮膚に、一文字にさっくりと赤い線が走る。


ドラゴンの内蔵器官は俺たちのそれに近いのか、流れ出る血も赤かった。


「……行くぞ」


俺は刀にMPを込めて紫電を迸らせ、自分の体を加速させる。


「はああ!」


澄火の力を纏い、攻撃を続けるのであった。

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