第10話 ワイルド

俺のあの脅迫じみた避難勧告のおかげか、付近には誰もいなかった。

俺たちとモンスターの戦闘によって破壊された場所がかなりあること以外は、特に何もない。


「誰もいませんね」

「そうか」

「それでこのあと、どうするんです?」

「このあと、自衛隊と警察が来てこの近辺に大急ぎで基地を作る。そしたらそいつらに引き渡して終了だな。それまでに……ここら辺を整地しとくとするか」

「……整地?」


そういうと咲良さんはなぜか刀を構える。


「……砕!」


ずがががーん。


おそらく結構な量の商品が中にはあったはずだが、それにお構いなく爆発が起こり周囲の建物が崩壊していく。


「あの……」

「うん?どうせ問答無用で基地を作る時に破壊されるだろうから、問題ないぞ」

「資源とか……」

「私たちが発掘する魔石は資源はアイテムを通すと資源になる。なに、無駄にした分はまた稼いでくればいい」


ワイルドだなあ……


チラリと隣を見ると、珍しく澄火が尊敬の眼差しを向けていた。

……できれば、こういうふうになるのはやめてほしい。絶対俺に写って暴走するデュオとして知られるようになってしまう。


ひとしきり破壊行為を続けた後、咲良さんはふうと額の汗を拭った。いい仕事をしたと言わんばかりだ。


「そういえば、オークション参加するんだろ?」

「え?あ、はい」

「いや、おめでとう。初めて一年もしないうちに参加できるようになるとはな……」

「ありがとうございます」

「しかも、プリンセスの案内までするんだろ?」

「……はい?」


プリンセスの案内?

俺の知り合いにプリンセスはただ一人……エルヴィーラだけだ。


ああ、なるほど。それで一ヶ月後に会おうと言っていたのか。


「……む?その様子だと、知らなかったのか?」

「え?いや、まあ、はい」

「そうか。では、聞かなかったことにしてくれ」


おそらく本来は正式に話が決まるまでは口外禁止のことだったのだろう。咲良さんは、当人である俺たちには話がいってるものと思って話をしたに違いない。


「……む、来たな。第一陣が」

「あれがですか?」


ブルドーザー、ショベルカー、そしてトラック。自衛隊というよりは、建築業者である。


「ああ。あああいうものなのさ……む」

「どうしたんですか?」

「まずいな……」


咲良さんがそういうと同時に、ドラゴンが二体、ダンジョンから飛び出してきた。

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