第8話 フラグ

「……まあ、一応あなたの行動のおかげで避難が早まったことは事実なので、今回は不問にするとしましょう」


散々叱られたので別に不問にはなってないような気がするが、俺は口には出さなかった。


「現在探索者が到着し、付近の魔物を一掃。そのままダンジョンへと向かっています……今回は軽い災害で済みましたね」


……おい。そういうセリフは、世間では大体フラグというんだぞ。


果たしてオペレーターがそう言った瞬間、ずんと周囲の空気が重くなる。

そして、わらわらと強そうなモンスターが多数現れ始めた。

おそらく一体で普通の街を完全に破壊できそうなレベルのモンスター。普通ならダンジョンの奥底に、それも一体ずつ現れるレベルのモンスターである。


武器のない今の俺1人ではちょっと捌くのがきつい数だ。


「……澄火」

「……ん」


そう思っていると、澄火がしゅたっと俺の横に降り立った。


「行くぞ」


俺はアム・レアーを連射しつつ、ニャルトラ・ステップを起動して空中を蹴る。そのまま爆発モードにした蹴りでモンスターに攻撃を仕掛ける。


さすがというべきか、モンスターはその爆発を回避するとこちらに襲いかかかってくる。


「澄火!」


しかし本命は澄火の攻撃だ。


「閃雷・墜」


なんだか聞き覚えのあるネーミングセンスな技名とともに、澄火が上から降ってきた。

ピシャアンと轟音が辺りに響き、周囲のモンスターを道路ごと粉砕する。

特に道路の損害は気に留めず、澄火はすっと俺の横へと戻ってきた。

なんというか、こういうところが俺にも段々写ってきて、その結果がさっきのスマホ破壊に繋がった気がする。

誇張抜きにほぼ24時間一緒にいるので、いろんなところが似てくるのは当たり前っちゃ当たり前だ。


同棲している仲のいいカップルのbpmは似通っているなんて話もあるし。


……まあ、今はそんなことは置いておこう。


今ので周囲にいるモンスターはこちらへ向いたようだ。とりあえず、周囲に被害が出る可能性は減った。あとは、俺たちが生き残るかどうかだが……


「ん。大丈夫。私がいるから」


と、隣で頼もしい相棒が言った。


「だな」


これを機に俺も蹴り攻撃の練習をすることにしよう。なれてきたら、アム・レアーも混ぜつつ。生死を賭した、いい訓練になりそうだ。




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