第5話 地震
「……ふう。食べたな」
「……ん」
朝はホットケーキだったとはいえ、昼から結構ヘヴィーなものを食べてしまった。
夜は軽めにうどんとかにした方がいいかもしれない。
「……地震?」
と、建物全体がグラグラと揺れる。結構大きな地震だ。10秒ほど揺れたかと思うと、ピタリと止まる。
「澄火……どうやら買い物はここまでみたいだな」
「……ん」
澄火は残念そうに頷いた。
今の地震は明らかにおかしい点がある。
それは、初期微動がなかったということだ。
結構な揺れだったので、初期微動もそれに応じて結構な揺れでなくてはならないはずなのに。
初期微動がない地震のパターンはたった一つ……ここが震源地である場合である。一応言っておくが、震央ではなく震源だ。
「外か?」
「ん」
俺たちは急いで今いる建物の外へと向かう。
周囲の空気感もだんだん変わっていっている……これは明らかにダンジョン災害の兆候だ。
ただし、このアウトレット近辺にダンジョンはなかったはず。一応日本ダンジョン探索者協会でチェックしたから間違いない。
つまり……この災害は、ダンジョンの発生に伴って生じている可能性が高いということだ。
果たして、建物を出た俺たちが見たのは……ダンジョンの洞窟と、その周辺から湧こうとしているたくさんのモンスターだった。
「澄火!」
「ん」
ダンジョン災害が起こっているのであれば、ダンジョンの外であっても能力が使えるという言い訳が使える。
能力解放だ。
俺はアム・レアーを虚空から取り出して、ニャルトラ・ステップを装着する。
そして、今まさに民間人に飛びかかろうとしていたモンスターの前に飛び出し、モンスターをダンジョンの中へと吹っ飛ばす。
もちろん、頭をグシャリとつぶすこともできたが、流石に自制した。
「あ、ありがとう……」
俺はお礼を言っている声に反応を返すこともできずにアム・レアーを操作する。
民間人が襲われそうになっているのはここだけではない。
と、紫電が迸り、あたりにいる魔物を一掃した。
「さすが」
「……ん」
俺はいつのまにか屋上に移動していた澄火の横に飛び、あたりを見渡す。
そこそこ広範囲にモンスターが散らばっているようだが、ここからならいくらでも狙撃できそうだ。
「……澄火、今回は前衛をお願いしていいか?」
「ん。任せて」
今日は刀とかそういう物騒なものは置いてきてしまったので、俺の攻撃手段は現状このアーティファクト二種しかない。
流石にそれだと、近接戦闘ではオールマイティに使えるユニークスキルを持つ澄火に軍配が上がるだろう。
「じゃ、頼む」
「ん」
澄火は首肯すると、屋上からひらりと下へ飛んだ。
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