第8話 王城
「ここが王都か……」
さすが帝国を名乗るだけあって、ここまでかなりの距離があった。
地図通りの場所に来たが……なかなか凄まじい場所である。
当たり前のように街の中に誰もおらず、モンスターが跳梁跋扈している。
しかも、あちこちに何かよくない力が溜まっているのを感じる。あまり近づきたくない感じだ。
「……澄火、どうする?」
「……ん。とりあえず、王城に行ってみよ」
澄火はそういうと、誰も守っていない街の正門をてくてくとくぐった。
俺は慌てて澄火について行く。
アム・レアーを起動して、俺たちに襲いかかってくるモンスターがいればすぐに対処できるように体勢を整える。
王城はヨーロッパにありそうな感じの西洋風の立派な城で、優に東京ドームくらいの大きさがあった。
王城に近づくにつれ、よくないものの吹き溜まりが増えていく。
どうやら吹き溜まりには魔物を強化する機能があるらしく、周囲をうろつくモンスターも強くなっていく。
「……ん」
澄火が俺たちの周りに紫電で構成されたドームを張る。どうやら、それで呪いの影響から身を守ろうということらしい。
王城へ入り、俺たちは勇者が身を投げたという庭園へと向かう。
かつては貴族や役人が仕事に励んでいたのだろう王城は、今やモンスター––––それもかなり強力な––––が蔓延る空間と化していた。
俺は一体一体アム・レアーで撃ち抜いていくが、キリがない。というより、これ以上武器を使用すると王城が壊れてしまいそうだ。
俺は魔物を無視することにして、澄火を抱えて王城の廊下の空中を疾走する(多分、王城の床を足場にすると踏み抜いてしまう)。
あちこち三時間ほども彷徨った挙句、ようやく中庭……だったらしき場所へと到着した。
「ん。ついた?」
澄火はそう言って俺の腕から降りる。
かつて中庭だっただろう場所は、不毛の荒地と化していた。
中央には、何やら一段と禍々しい澱みの吹き溜まりがある。
「……あれが元凶か?」
「……んー」
澄火は首を傾げると、上の方を見上げる。
勇者が飛び降りたとおもわしき窓がそのまま開けっぱなしになっているのが見える。
そこから、地面にあるのとは比較にならないくらい禍々しいものが流れ出している。
「……どうするか」
流石に、あれに入る気はしない。しかし、様子を見るくらいはしなくてはならない。
俺はニャルトラ・ステップを起動して、澄火を抱えて空中をぴょんぴょんと跳んでいく。
ちょうどいい高さまで来たところで空中に止まり、中を覗き込む。
見えたのは……なかなかに衝撃的な光景だった。
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