第9話 閃撃・墜

裸の女性が100人くらい……というか百人が、部屋の中に転がされている。

それぞれに窓のすぐそばにある吹き溜まりから出現した触手のに拘束され、うめき声をあげている。


確か長老の話だと、勇者が身を投げてから数十年の時が経過しているはずだが、女性たちに老いを感じる要素はない。


「……やべえな」


まさか、数十年もの間ここで凌辱され続けていたということか?

勇者の容姿に悲鳴をあげた代償としては、あまりに酷……いや、国が滅んだ代償としては正当なのか?

ともかく、衝撃的であることに変わりはない。


「澄火、どうにかできるか?」

「んー……」


澄火は手を前方に出すが引き戻す。


「多分今あれを討伐すると、あの人たち全員死ぬと思う」

「ええ……」


俺は女性たちを眺める。


「……どうする?」

「…………介錯してあげよう。あのまま生きるよりはマシだろ。なるべく生き残るように努力はしてくれ」

「……ん。やってみるけど……期待はしないで」


そういうと澄火は右腕に力を集める。


「はああ!」


紫電を放ち、触手の発生源である吹き溜まりを穿つ。

すると、触手がスルスルと女性から離れ、吹き溜まりに帰っていく。


女性たちの髪がさーっと白くなり、まるで果実を絞るように肌がしわくちゃになっていく。

そして数十秒も経つと、女性たちは骨と皮だけになって死んだ。おそらく栄養補給や老化の停止を全て触手に依存していたが故にその揺れ戻しがきたのだろう。


「……まずい!」


俺はそう言って澄火を放って二刀を抜き交差させる。

一瞬の後、俺は遥か上空へと舞っていた。


––––どうやら、ガードはギリギリ間に合ったようだ。


俺は刀にMPを込めて炎と氷の力を纏わせ、ニャルトラ・ステップを起動する。


––––閃撃・墜


ステータスを存分に生かし、俺は重力に従って空を翔け降りる。


そして、俺を吹っ飛ばしたと思わしき者に二刀でもって斬りかかった。


今度は逆に俺がそいつを吹き飛ばすことに成功し、そいつは王城の壁にべこりと埋まった。


一瞬だけ見えたそいつの容貌––––豊満な顔に禿げた頭、そして醜い顔––––から考えて、おそらく、勇者だろう


「……アンデッドか?」


そして今の攻撃から考えて、生前の勇者と同じレベルの力を持っていると思われる。おそらくまだ本調子なので


「ふふふ。そんなものじゃあないさ。どちらかといえば、封印が解けた……てなところかな」


どこか気持ち悪い物言いをする勇者。


「悪いけど、君たちにはここで死んでもらうよ……君たちがいるかぎり、このクソ世界から出ることはできないからね……封印を解いてくれたことには感謝してるけど」

「そうか。じゃあしょうがないな」


俺は基本的に他者を傷つけたくない。

今の攻撃も、勇者が確実にガードすると考えておこなったものだ。


だが……


「そっちがそのつもりなら、容赦はしない」


俺は二刀を構えた。

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