第7話 呪い

「昔……とは言っても、80年前ほど昔。

「邪神と呼ばれる怪物がこの国を支配していました。

「ええ、この里は『ライガー帝国』の片隅にあります。

「当時の皇帝は、邪神を倒すため……異邦人に助けを求めました。

「異邦人はある要求と引き換えに邪神を倒しました。

「これから一年間、毎日女を捧げよ。

「ええ。帝国は広い。

「たかが365人程度、すぐに集まります。

「しかし問題は……その勇者が邪神の呪いによってひどく醜い顔になっていたことです。

「……ちょうど、私のように。

「寝所に呼んだすべての女に悲鳴を上げられた勇者は嘆き悲しみ、そのまま自殺してしまいました。

「その結果……勇者のうちに閉じ込められていた邪神の呪いがこの世界を覆ったのです。

「そして……その結果の一つが、この顔……というわけです」


重苦しい話が終わった。


長老は再び仮面をつける。


「呪いの一つ……ということは、他にも呪いの効果が?」

「ええ。作物が育たぬようになったり、強大な力を持つ魔物が出現したり……後者は肉の調達に役立つので、恩恵とも言えなくはないですが……」

「……なるほど」

「異邦人の方なら、何か解決法は思いつかないですかな?」

「解決法……」


うーむ。

俺たちにできることとすれば……斬る。焼く。凍らせる。吹き飛ばす。電気を放つ……くらいである。


とても呪いがどうにかできそうにないが……


「醜くする……魔物の発生……生殖の抑制……邪神?」


澄火は横で何か呟いている。


「澄火、なんとかなりそうか?」

「……できる、かもしれない?」

「まことですか!」


こくりと澄火は頷いた。


「そうですか……よかった。本当に良かった」


うんうんと長老は頷き、涙さえ流している。


「……本当に大丈夫なんだろうな?」

「ん。多分……私のユニークスキルにはそういう機能もあるから」


初耳なんだが。

なんだか色々と怪しい澄火だが、俺にも少し気になることがある。


「……ちなみに、その呪いの発生源はどこなんです?」

「勇者が身を投げた王城の庭園です……王城の位置はお示ししますので、そちらへ向かっていただければ」


……うん?

何かが引っ掛かる。が、それが何かがわからない。

俺はとりあえず気にしないことにして、話を先に進める。


「王城の場所を教えてくだされば、すぐに向かいましょう」

「ええ。では、地図をお渡しします」


そういうとぱんぱんと手を鳴らす。すると、先ほど案内してくれた女性が地図を持ってきてくれた。


俺は礼を述べて、その里を後にした。

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