第6話 仮面の下

「……ここは?」


連れてこられたのは、堀と柵で囲まれた一つの村だった。


紫色の肌を持つ人間が生活しているのが窺える。特に農業とかはやっている気配はない。

どうやら、狩猟と採取に頼るやや原始的な世界を送っているようだ。


村に入るや否や、生活している全員がばっとこちらを向いた。

種々の奇妙な紋様が描かれた仮面がこちらに向けられる。


てっきり村の外で活動する時にだけつけるものと思っていたが……どうやら全員が着用しているようだ。


「こちらねす」


と、通されたのは他のいえよりも一段高く作られた家……の片隅にある部屋。


十分ほどそこにある座布団のようなものに座って待機していると、「お待たせしました」と言って誰かが入ってきた。

仮面をかぶっていて判然としないが……高めの声と、盛り上がっている胸から考えて女性だろう。


「こちらへどうぞ」


と言って一つの部屋に案内された。


そこはかなり大きな部屋で、昔の将軍に謁見する場所のように、奥の方が一段高くなっている場所だった。

ポツンと置かれている座布団のようなものに座れということだろう。


俺はそう解釈して、一応日本人らしく、俺はそこに正座して再び待機する。


十分程経ち、ようやく奥からおそらく長老にあたる人物と思われる人が登場した。

作法もわからずにぼーっとしていると、長老は中央に座ると、仮面を外した。


「…………!」


仮面の奥から現れたのは、目を背けたくなるような醜い顔だった。


肌は火傷……それもちょっとした火傷ではなく、皮下組織まで焼かれたような重い火傷でもしたような感じで爛れ、目は濁り、骨格は歪んでしまっている。


「……この顔を見て驚かれたのは初めてですな……やはりあなた方は異邦人なのですね」

「…………初めて……ということは、もしかして」

「ええ。この里の全員が、このような醜い顔です」


一体何が。

俺はそう聞こうとしたが、自制した。


俺たちは所詮外の人間だ……そこらへんに関与するべきではない。


「なぜこうなったのか……それを説明するには少し時間がかかりますな……まず、この村の成り立ちからお教えしましょうて」


そういうと、長老は語り出した。

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