第4話 炎華獄界

ドロップアイテムは変化がなく、虫眼鏡がドロップした。傷がつかないよう慎重に梱包してリュックに入れ、俺たちは先を急ぐ。


モンスターを澄火の紫電と俺のアム・レアーで吹き飛ばし、ボスも難なく切り飛ばし、俺たちはあっという間に30層まで到達した。


ちなみに、24層のボスは蜚蠊(作者注・検索非推奨)のような見た目をしたモンスターだった。澄火の電撃によって麻痺したそいつを俺が刀で切り刻み、一瞬で戦闘は終了。

ドロップアイテムは、瓶に詰められた何かの粉だった……もしかしたら、ポーションの類なのかもしれない。


俺は一旦ステータスを開く。



若槻 翔

レベル65

HP 3013/3013

MP 5251/5251

SP

筋力 1931

魔力 1824

敏捷 1853

耐久 1829

器用 1811



全体的に結構な上昇量だ。

ボスとの戦闘による経験値ブーストも影響してそうだ。


俺たちは30階層のボス部屋を開ける。


中では情報通りに、透明なクリスタルで体が構成された、不定形の魔物が蠢いていた。

『クリスタルスライム』と命名されているらしい。


「よし」


俺は紅刀を鞘ごと引き抜く。

クリスタルということは、澄火の電撃は効かない可能性が高い。


「マジックユーザー」の報告書には火系統の魔法を使ってなんとかしたみたいなことが書いてあったし、これが最善手のはずだ。


「……炎華獄界」


MPを込め、先ほどと同じように加速して抜刀術を放つ。

一瞬でボス部屋中が青い炎で包まれる。燃えるものがないためすぐに鎮火してしまったが、それでもクリスタルスライムへの攻撃としては十分だったようだ。


クリスタルスライムは温度の変化に耐えきれず、ぽろぽろとその体を自壊させてゆく。


討伐、完了だ。


なんだかせっかく手に入れたのにピース2……ブーツを全く使っていないような気がする。


「……そういえば、このブーツの名前何にしようか」


ボスが討伐されてからドロップアイテムに変わるまでの数分間を利用して、俺は澄火に話しかける。


「……んー……ニャルラト・ステップとか?」


なるほど。クトゥルフ神話に出てくる「這い寄る混沌」から連想した……というわけか。

瞬時にそれを思いつくとは、さすが澄火だ。

もしかしたら、あらかじめ考えておいただけかもしれないが。


「よし。じゃあ今日からこのブーツはニャルラト・ステップだな……お」


と、部屋の中央に宝箱が出現する。

パカリと開くと、中には一つのかなり大きな宝石(とあと魔石)が入っていた。


カラット数とかはわからないが、大体拳くらいの大きさの、鮮やかなエメラルドである。


俺はタブレットを開き、ダンジョン協会データベースにアクセスする。

前回入った時の報告書には、「魔石とポーションがドロップした」との記載がある。

ひょっとしたら、前回潜ったパーティは宝石が手に入ったことを報告しなかったのかもしれない。

ぽちぽちと機能を切り替えて、俺はダンジョンドロップの大体の値段が知れるサイトに飛ぶ。

宝石の大体の大きさや色を入力すると……「オークション級です。鑑定不能」という表示が出た。


よくわからないので、熊川さんに相談するとしよう。

俺はおそらく時価数百億円ほどのそれをリュックに入れ、先へ進む。ここから先はデータがゼロだ。気をつけて行かなければ。


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