第3話 氷花雪界
第18階層の魔物は炎を纏った人型の魔物でした。エンチャンターの雲井慎の支援を受けた我々のエースである白石里奈による氷属性の魔法による全体攻撃と追尾攻撃により攻略。ドロップアイテムは高精度の虫眼鏡でした。(後日分解した上でレンズが研究所へ。協会追記)
––––パーティ『マジックユーザー』東北ダンジョン攻略報告書より抜粋。
俺はタブレットから顔を上げて、ぐるりと部屋を見渡す。
もしや、これ、炎を全部消さなければいけないとかそういう感じか?
消すには……俺が風圧でなんとかするとかしかないような気がするが……ちょっとあまり考えたくないレベルの大変さだ。
何か手段はないか……
と、俺はそこで気づいた。
なぜか、俺が左右に吊ってる刀の温度が全く違う。鞘を通してでもわかるくらいだ。
俺は熱い方の刀を引き抜き、等身に手で触れてみる。
まるで焼けるような熱さだ……いや、ステータスで強化されてなければとっくに手が焦げるまで焼けてしまっているだろう。
放射熱だけではとても考えられないくらいの熱量だ。
心なしか、刀身が帯びる赤味も少し強くなっているような気がする。
一旦納刀し、今度は冷たい方の刀を引き抜く。
こちらは手がピキピキと凍りつくほどの冷たさである。もはや物理法則を色々と超越してしまっている温度だ。
こちらの刀も、青味が少し強くなっている気がする。
「……なるほどな」
俺は両方の刀を引き抜き、MPをこめる。
すると予想通り、紅の刀は炎を発し、蒼の刀は周囲に霜ができるほどの冷気を生成し始めた。
今まで気づいていなかったが、どうやらこれがこの刀の真価らしい。
そうだな……それぞれ、『紅刀』『蒼刀』と名づけることにしよう。
俺はMPの出力を上げ、無造作に蒼刀を周囲に振る。すると、猛っていた炎が冷気によって一瞬で鎮火した。
……よし。
「澄火!とべ!」
俺は澄火にそう叫び、両方の刀を納刀する。右腰に吊っていた蒼刀を鞘ごと引き抜き、左手に構える。
MPを込め、鞘の中で力を凝縮させる。
澄火が安全圏に離脱したのを確認して、俺は技を発動させる。
––––
全身を一瞬だけ加速させ、その一瞬の間に刀を引き抜いて神速の抜刀術を放つ。
りいん……
耳鳴りのような音が響く。
そして、ボス部屋全体の床が凍りついた。いうまでもなく、蒼刀の力だ。
俺は蒼刀を振って等身に張り付いた霜を落とし、鞘へと納刀する。
「……ん。『アイスプラネット』とかどう?」
澄火はインスピレーションを刺激されたのか、技名を提案してくる。
「ちょっと重くないか?」
「んー、じゃあ、『エターナルフリーズ』とか?」
「……うーん」
「『氷花雪界』とか」
「……いいかもな」
なかなかかっこいい名前だ。
……なんだか順調に厨二病の道を駆け上がっているような気もするが、気にしてはいけない。
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