第2話 炎人
そしてあっという間に17階層の出口まで来た。
6階層、そして12階層にボス部屋があったので、次の階層もおそらくボス部屋である。
6階層では剣が、12階層では謎のインゴットがドロップした。インゴットの方は、後で倶利伽羅さんにでも売るとしよう。
「んじゃ行くか……」
俺たちは階段を降り、ボス部屋の扉を開ける。
日本ダンジョン探索者協会のデータベースによれば、この階層には炎を操る人型の魔物––––仮称、「炎人」がいるということになっている。
前回攻略したパーティには氷系統の魔法を使えるメンバーがいて、MP回復能力をアイテムによって上げてどっかんどっかん氷を撃ちまくって攻略したらしい。
「アム・レアー」
俺は虚空からアーティファクトを取り出す。
ちなみに、ピース2––––ブーツは外出時は常時着用している。
履き心地がいいし、なかなかオシャレなデザインだからだ。
「ん」
澄火は無造作に扉を開く。
中央まで進むと、ぼうっと部屋中に火が広がった。ダンジョンの中は地下だからか結構涼しいが、一気に気温が上がって不快指数が上昇する。
「ぐあおーーーーー」
少々間抜けな叫び声をあげて、ビュンと何者かが降りてくる。
全身が火に覆われている、人型の魔物……どうやら、情報通りのようだ。
動きを見る限り、結構強い。少なくとも、荻窪ダンジョンで俺たちをボコした赤鬼よりは強そうである。
「ぐあー」
唸り声を上げると、人形の魔物……炎人はこちらに手をかざす。
少し嫌な予感がして回避行動を取ると、数コンマ後に俺たちの足下から炎が上がった。
「……雷拳」
澄火が猫のようなすばしっこさで炎人へとダイブする。
紫電に変化した澄火の拳が炎人に突き刺さり、一気に爆発を起こす。
しかし、どうやら効果はいまひとつのようだ。攻撃を回避すべく全身を紫電に変化させた澄火が俺のそばに降り立った。
俺はアム・レアーを起動して、今残っているMPの7割をこめる。
「発射」
どちゅうん。
アム・レアーから極太のビームが打ち出される。
すると、ふっと炎人の姿が揺れた。
ついで、別の場所に現れる……どうやら、転移能力をも持っているらしい。
なかなかにめんどくさい魔物だ。
「……斬るか」
俺は刀を引き抜き、『加速装置』を発動させる。空中を二度蹴って肉迫し、反応できない速度で魔物をめったぎりにする。
200回ぐらい切ったところで澄火のそばへ戻る。
すると、魔物の姿が崩れ落ちた……かと思えばまた元に戻った。
「……うん?」
何かがおかしい気がする。
俺は一旦澄火に魔物の相手を任せて、データベースを読み始めた。
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