第15話 庭園
一時間後。
……眠れない。
俺はベッドからむくりと起きた。
結構長いこと昼寝してしまったのがいけなかったらしい。全く眠りに落ちる気配がない。
俺は観念して、先ほどと同じように澄火の周りに四機のアム・レアーを忍ばせる。澄火は特に気付いた様子もなくすやすやと心地良さそうな寝息を立てている。
俺は澄火を起こさないように気をつけながら、そっとベッドから降りる。
海に囲まれているためか、少し肌寒い。
俺は荷物からカーディガンを取りだして羽織り、部屋を出た。
ふらふらと屋敷を彷徨うのもどうかと思ったので、俺は屋敷の中心部にあるという庭園へと行くことにした。
夕食の時に、エルヴィーラから見ることをお勧めされたのだ。
朧げな記憶を頼りに屋敷を進み、中庭へと続く扉を開けて俺は庭園へと出た。
今日はちょうど満月で、月明かりが斜め上から差し込んできている。
ステータスによって感覚器も強化されているため(どの数値が影響しているかはわからないが)、その光で十分視界が確保できる。
庭園の外周部には高い生垣が作ってあった。
蔓性の植物が絡みつかされ、そして下にはたくさんの花が植えられている。
無秩序なように見えて、計算され尽くした配置であることが素人の俺から見てもわかる。
もしかしたら、潮風から花を守るために、防風林のようなこういう構造になっているのかもしれない。
生垣はまるで迷路を作るように、複雑な道を形成している。
花たちを鑑賞しながら迷路を抜けると、そこにはバラを中心とした低木がたくさん植えられたスペースがあった。
よく見ると、そのそばにはすみれやコスモスなんかの小さな花も植っていることがわかる。最も、今は季節から外れているので咲いてはいないが。
バラはちょうどこの季節に咲く品種なのか、雄々しく咲き誇っている。
俺はバラの一つ一つを鑑賞しながら、月明かりを頼りにして庭園の奥へと進んでいく。
そして、夜のティータイム中らしく、庭園に設置されたガーデンチェアに座り優雅に紅茶を楽しむエルヴィーラ王女を発見した。
エルヴィーラの周囲には、一体どういう原理なのか、蛍が飛び違っているかのように光源がふよふよと浮いていて、あたりをぼうっと照らしている。
一枚の絵画のような美しい光景にしばし俺は見惚れていると、
「ご機嫌よう」
とエルヴィーラがこちらに声をかけてきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます