第14話 浴場

夜。夕食を家主……というより島主のエルヴィーラとともに摂ったのち。


俺たちはお風呂に入るように促された。


「……ん。先に入ってきて大丈夫」


そう言って手のひらをひらひらふる澄火。

俺は一応澄火の近くにアム・レアーを忍ばせてから、地下二階にある浴場へと急ぐ。


ついこの前発見したが、アム・レアーには周囲の状況を把握するようなこともできるようなのだ。

……最も、映像や音声を頭の中に投影するようなものではなく、周りにどれくらいの人間がいるかとかをざっくりと把握する程度のものだが。

そして、アム・レアーを虚空に隠すのは、澄火のそばでも問題なくできるのだ。流石に操作権を渡したりとかはできないようだが、ボディガード用としてかなり役立つ機能である。


地下二階の浴場は、大浴場と呼ぶには小さいが、それでもかなりの大きさを持っていた。大体、人が優に10人は入れそうな大きさがある。

壁には、いろんな種類のシャンプーやらコンディショナーやらボディソープやらがまるでコレクションのように並んでいる。


ヴァイオレット曰く、どれを使っても大丈夫とのことだった。


……なんというか、逆に困るセリフである。


一体何を使ったらいいのか、若干途方に暮れていると、ガラリと浴場の戸を引いて澄火が入ってきた。


半ばこの展開を予想していた俺は、入ってきたのが澄火だと認識したのちにアム・レアーを回収し、澄火の裸を見ないようにくるりと澄火に背を向ける。


「……ん。たくさんある」

「ああ。どれを使う?」

「んー」


澄火はぺたぺたと俺の横に来ると、棚を眺める。そして、ひょいひょいひょいと5つのボトルを棚から引き抜いた。


「シャンプー、コンディショナー、リンス、ボディソープ、ヘアオイル」


澄火はぺぺぺぺぺとそれを並べると、ぽすりとバスチェアへと座った。


髪を洗えということだろう。


俺はシャワーヘッドを手に取った。


澄火の髪を洗うのはこれで二回目だが、心なしか以前よりも髪質がよくなっている気がする。


互いに髪を洗い、体の汚れを落とした後(流石に体はセルフサービスだ)、俺たちはお風呂へざぷんと浸かる。

何かが入っているのか、少しいい香りがする。


どこで何を聞かれているかわからないので会話をすることもなく俺たちは風呂を出て、そのまま寝ようということになった。


「……ん。おやすみ」


どうやら澄火も眠かったのに我慢していたのか、澄火はすぐにすうすうと寝息を立て始めた。


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