第13話 説明書
「……ふう」
案内されたのは、キングサイズのベッドが設置された部屋だった。
なぜかはわからないが、澄火と一緒の部屋だった。俺たちの警戒心を見抜いた上での配慮だろう。
俺はそのキングサイズのベッドへダイブする。数分間話しただけだが、どっと疲れが押し寄せてくるのを感じる。
「……ん」
澄火はベッドに座ると、俺の頭を持ち上げて膝に乗っけてくる。そして、俺の頭を優しく撫でてきた。
正直言って俺たちの家にある高級枕には寝心地で言うと劣るが……なんというか、心の芯まで温められるような快感がある。
しばらく澄火の膝枕を味わい、俺はベッドから起き上がる。
プロジェクト:####ピース2の性能検証をしなくてはならない。
俺は靴を脱ぎ、ピース2を虚空から取り出してMPを通す。
おそらく、これにも説明書があるはずだ。
俺はそう考えて、念をピース2へと送る。果たして、俺の脳裏に一枚のイメージ画像が出現した。
プロジェクト:#### ピース2/5
ブーツ型個人用兵器。空間を++++により固着させ、空中を踏むことを可能にする。固着の程度・時間は消費したMPの量によって変化する。
また、MPを消費することで、ブーツの強度を高め、また攻撃が強化される。
この兵器は装備者の意思によって€€€€へと隠すことが可能。
この説明書は、最初にMPを消費した時に装備者の知的領域にインプットされ、その後これを想起することで閲覧者の知的領域内で溶けて消える。
以上
「空中を踏める」「蹴り攻撃を強化する」というのが主な機能のようだ。
ユニークスキル「能力奪取」により強化されたステータスによる高機動型の戦闘が俺の今のスタイルを、大幅に強化することができるだろう。
しかも、文面からは特に使用制限とかはなさそうだし、擬似的に空を飛ぶ……なんてことも可能かもしれない。使う機会があるかどうかは別として、結構ワクワクする。
俺は一旦ブーツを虚空に消し、今度は着用した状態で出現するように意思を送る。
すると俺の目論見通り、ブーツを装備することに成功した。俺はベッドから立ち上がり、試しに少し跳んでブーツの機能を発動させてみる。
「おお……」
「……ん。すごい」
なんというか、見えない床に乗っているような感じだ。
俺はふと思いついて、その場でひょいっと空中で半回転して、ちょうど逆立ちするような格好になる。
その状態で能力を発動させると、なんとそのまま足が空間に固定された。
うまくやれば、重力を無視して天井に立つようなことも可能なようだ。
「……ちょっと怖い」
澄火には不評だった。明らかに地球の法則に反しているのが、生理的に受け付けないのかもしれない。
俺はその状態を維持したまま2歩歩いてから、すっと靴を消失させてベッドへ飛び込む。時差ボケもあるし、ちょっと眠い。
澄火はゴロゴロと俺の体を転がし、再び膝枕をしてくれる。
「……ん。おやすみ」
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