第12話 プリンセス
「ようこそ、我が屋敷へ」
部屋に入ると、俺は部屋の中央のソファに優雅に座る少女からそう声をかけられた。
「私の招待に応じてくださり、ありがとうございます……どうぞ、おかけになってくださいな」
当たり前のように流暢に日本語を操るその少女は、見たことがないほどの美少女だった。
さらさらとした黄金の髪。シミひとつない白い肌。整った目鼻立ち。白いワンピースに隠れていてわかりにくいが、かなりの魅惑的なプロポーションを持っていることがわかる。
何よりも惹きつけられるのは、その瞳……この世の全ての知を凝縮したような、そんな光を湛えた瞳だ。
生来の美しさを、長い年月をかけて磨き上げてきたのであろうことが見て取れる。
俺は思わずその美しさに呆けそうになるが、なんとか理性を取り戻す。ここは、敵陣のど真ん中かもしれないのだ。
「……わたくしは、レイヴァント王国第三王女、エルヴィーラと申しますわ」
王女。
確かに、この島を拠点に改造するような財力、空港の内部に人を送り込む権力、さらには滲み出る高貴なオーラからしても一般人ではないとは思ってはいたが……
まさか、一国の王女だとは。
「この小さな島で、アーティファクトの研究をして暮らしております」
「アーティファクト?」
「ええ。あなたもお持ちではないのですか?例えば、ピース1を」
「……さて、どうでしょうか」
俺はひとまずはぐらかすことにする。
信頼関係が構築されていない中で、こちらの手札を晒すのは躊躇われる。
「ふふふ。そうですか……では、ひとまずこちらをお返ししましょう」
エルヴィーラ王女はそういうと、手を机の上にかざす。
すると、キュリキュリキュリと机の上に一対の靴……プロジェクト:####ピース2が生成された。
あの部屋で見た光景。……あまり強そうなオーラは感じないが、この人もまた、ダンジョン適性を持つ者の1人のようだ。
それも、おそらくこういったアーティファクトを解析して操る、強力なユニークスキルを持つ。
「ふう。どうぞ、ご遠慮なく」
「……では失礼して」
俺はステータスを制限する指輪を外して、靴をとってMPをこめる。
何かがつながったような感覚を得たのち、俺は直感に従ってピース1と同じように、靴を虚空へと消した。
「やはりピース1もお持ちなのですね。そちらもぜひ見せていただきたいところですが……それはまたの機会にいたしましょう」
どうやら、俺の迷いのない動作を見て俺がピース1を持っていることを察したらしい。
「そうしていただけると助かります……ところで、いったいなぜあなた方が介入したのです?」
「……申し訳ございませんが、それについてはお伝えできません。私は所詮、第三王女に過ぎないので」
つまりは、王族内のトラブルということか……あまり首を突っ込まない方が良さそうだ。
「今夜は泊まって行っても構いません。屋敷をあげて、精一杯おもてなしさせていただきます」
「……ありがとうございます」
「ふふふ。では、ヴァイオレット。あとは頼みましたよ?」
「かしこまりました、殿下……こちらへどうぞ」
どうやらこれで面会は終わりのようだ。俺は澄火と共に席を立って一礼し、ヴァイオレットに続いて部屋を退出した。
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