第9話 ロンドン、到着

12時間ほどのフライトののち、俺たちはロンドンのヒースロー空港へと到着した。

ちなみに、席はなんとファーストクラスだった。ゆったりとしたフライトで、疲れはほとんどない。

時刻は現地時間で午後8:00。ちょうど夜にさしかかったタイミングだ。


「先方が見つけてくれるみたいな話だったけど……」

「……ん」


俺たちは空港に降り立ち、とりあえず出口まで歩く。

ファーストクラスに乗っていたのは俺たちだけだったので、少し迷いそうになる。


「若月様と、星野様ですか?」


と、俺たちは後ろから英語で話しかけられた。

振り返ると、黒服にサングラス……といったいかにもSPといった格好の男が2人立っていた。

サングラスによって詳しい人相はわからないが、2人とも金髪の結構強面な感じの人だ。


「はい」

「本日は遠方よりはるばるお越しいただき、ありがとうございます。只今よりヘリにご案内しますので、こちらへどうぞ」


そういうと、黒服は歩き出した。

空港の中に––––それも、ファーストクラス用の出入り口に入れる……ということは、俺たちを呼び寄せた人はかなりの権力者ということか。


黒服についていくと、そこにはすでにシャトルバスが待機していた。

乗車するように促され、澄火と共に後方へ乗り込む。


黒服のうち1人が乗り込むと、ぷしゅーっとバスのドアが閉まった。もう1人の方は、どうやら運転席に向かったようだ。


ブーッブーッブーッブーッブーッブーッ……


と、俺のポケットの中のスマホが震える。

発信元を確認すると、熊川さんだった。


「はい」

「もうロンドンには着いたかしら?」

「ええ。今ヘリに案内してもらっているところです」

「そう。一応報告。組川ハルの死体が発見されたわ」

「……死体?」


突然のことに、俺は驚く。

いったいなぜ?


「理由はまだ調査中だけど……これは私の推測。多分、組織を抜けようとしたんだと思うわ。組川ハルはここのところ任務の失敗を繰り返していたらしいし、素行も良くなかった。そうなると、組織では再教育を受けることになるからね……」


まあ、確かにプライドは高そうではあったが……それにしても、死体か。

任務の失敗で処分されるとは……どこの映画の世界か、と言った感じだ。


「じゃ、旅行楽しんでね、お土産楽しみにしてるから」


ぷちっと電話が切れた。相変わらず忙しそうだ。


「発車します」


と、運転席にいる黒服の人が言う。どうやら、電話が終わるのを律儀に待っていてくれたようだ。


バスはブロロロロとヘリへ向けて走り始めた。

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