第7話 ゲームオーバー

しかし、するりと身を交わされてしまう。

どうやら、こういうシチュエーションには慣れているようだ。


「ふふふ。あばよ」

「…………?」


黒服は自信満々にそう言った。

俺は首を傾げつつ、黒服が走っていっている方を見る。


––––まずい。


そこには、ぽっかりと開くダンジョンの出口があった。


あそこを抜けられてしまうと、俺たちには追うことができない。

ダンジョンの外でのステータス能力の使用は原則禁じられているのだ。


「ちっ」


俺は舌打ちを一つして、アム・レアーを起動する。

ステータスが制限されているせいか、普段よりMPが通りずらい。


「食らえ」


俺はそれでもかまわずに、ビームを連射する。


「うわ!」


それを見た黒服は慌てて懐からマントをばっと広げる。

すると、そのマントがバリアとなって黒服の身を守る。ビームがバリアの表面で爆発を起こすものの、バリアは破れない。


それどころか、そのマントはこちらに襲いかかってきた。


「若くん!」


澄火が駆けつけ、紫電でマントを撃ち落とした。


そうこうしているうちに、組川ハルと名乗る黒服の男はダンジョンの外へと出ていってしまった。


まるで「どこでもドア」のように、黒服の男の目の前に黒い扉が現れる。

黒服の男はこちらをバカにするようにひらひらと靴を振ると、扉に手をかけようとする。


……その時。


さっと何者かが虚空から現れると、組川ハルの手から靴を掻っ攫っていき、再び虚空へと消えていった。


組川ハルは悔しそうに歯噛みすると、そのまま扉を開けてどこかへと去っていった。


「ゲームオーバーか……」


あわてて扉に飛びつくも、あっさりと扉が消え、俺は力無くぺたんと尻餅をつく。


残念ながら、プロジェクト####ピース2は奪われてしまった。


「はあ……」


俺は体からどっと力が抜けていくのを感じる。


「……ん」


と、澄火が自分のポケットから一つのものを取り出して差し出してきた。


羅針盤だ。どうやら、澄火が回収してくれたらしい。

……もしかしたら、他のピースを集めれば取り返す方法も見つかるのかもしれないが……ひとまず、今はそんなことを考える気力もない。


「帰るか」

「……ん」


俺たちはとぼとぼと帰路についた。

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