第5話 ピース2

扉に近づくと、羅針盤の光線がすうっと消える。そして、呼応するように扉の線が青色に発光し、とくん……とくん……と心臓が鼓動するようなペースで、中央にある窪みが点滅を始める。


俺は石狩ダンジョンでもそうしたように、羅針盤の蓋を閉めて扉にはめこむ。


ぶうん、という音が響き、扉の線が緑色に光る。そして、扉はぷしゅーっと左右に開いた。


部屋の中央には、俺の腰ぐらいの高さに固定された一枚のディスプレイ端末が鎮座している。

表面には、石狩ダンジョンとは違って5本指の手形が表示されている。


おそらく、ピース1が置かれていた施設と情報共有が行われ、アップデートがかかったのだろう。


自己進化を続ける機械……


俺の背筋に少し冷たいものが走るが、それを無視して手形に自分の手を置く。


表示されている手形は、ピース1の装備者である俺の手形とピッタリのサイズだった。


……起動に足るMPを確認

……起動しますか?

……「はい」「いいえ」


俺は「はい」を押す。

その瞬間、俺の体にかなりの負荷がかかる。しばらく待っていると、やがてふっと負荷は消え去った。


……エネルギー充填完了。

……装備者:若槻翔、解析データの読み込み完了。

……プロジェクト:####ピース2を起動しますか?

……「はい」「いいえ」


迷わず「はい」を押すと、キュリキュリキュリと空中に物体が生成ジェネレートされていく。


「……靴?」


生成されたのは、一対の靴……というよりブーツだった。

なんとなく、俺の足にピッタリと合うように生成されているような気がする。


靴の前面は白、後ろは黒を基調としていて、サイドの部分にブルーグリーンのラインで何かの紋章が描かれている。おそらく、プロジェクト####を造った者たちの紋章だろう。


靴の裏は不思議な金属で強化されており、中央部にはアム・レアーに嵌っているのとは少し違うガラスのようなものが見える。

おそらく、アム・レアーと同じように、MPをこめることで何らかの機能を発動させることができるのだろう。


「若くん」

「……ああ」


澄火の言葉にも背中を押され、俺は手を伸ばして空中にふよふよと浮かんでいる靴を手に取る。


そして、その靴を––––


突如部屋に現れた黒服の男が、俺の手の中からサッと奪い取る。

そして、そのまま男は部屋の外へ飛び出していった。

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