第3話 黒いドラゴン

「……ん」


エレベーターの動きが止まった。

俺は警戒しつつ、外へと出る。


その途端、うーうーうーとサイレンが鳴り始めた。


「……おいおい」


自分から呼び寄せておいて、その仕打ちはないんじゃないか?


俺はそんなことを考えたものの、ぼやいても仕方がない。


「……澄火」

「……ん」


俺は二刀を引き抜き、アム・レアーを起動して戦闘に備える。


部屋の奥から登場したのは……なんと言うか、黒いドラゴンのような機械的なモンスターだった。

表面は黒い光沢を放っていて、どことなく流動しているような感じもする。液体金属、と言ったところだろうか。


「ちょっと借りる」


と、澄火が俺の手から二刀を奪い、止める間もなくユニークスキルを発動する。


「雷帝」


ぴしゃあんという音が鳴り、澄火の体がかき消える。見ると、すでに澄火はドラゴンの向こう側にいた。


どうやら、雷へ変化して加速状態になる突進攻撃を放ったようだ。 


だが、効果はいまひとつのようだ。ドラゴンの体の一部が抉り取られたようになったものの、すぐに修復されてしまった。


「……んん?」


俺は加速して澄火のそばに行く。


「……このまま駆け抜けるか?」

「ん。それでもいい」


別に無理して倒す必要はないんじゃないかと俺は思い始めた。


「でも、その前に一度試してみてもいいと思う」

「……何を?」

「それの最大火力」


澄火はそう言ってアム・レアーを指差す。


確かこの前、MPの半分を消費した攻撃を撃った気がするが……その時、結構太いレーザーが出た覚えがある。

あの時よりMPの最大値は上がっているし、魔力のステータスも上がっている。

もしかしたら、あの黒いドラゴンに有効打を与えることができるかもしれない。


俺はアム・レアーを操作して、照準をこちらに向かってきているドラゴンへと合わせる。

魔力のステータス出力を最大値まで上昇させ、一気に全てのMPを送り、黒いドラゴンを消し飛ばすイメージをする。


次の瞬間、アム・レアー4機から直径1メートルはあろうかという極太のビームが放たれ、ドラゴンの体に突き刺さった。

ビームは内部で爆発を起こしたのか、ドラゴンの体が爆発四散する。


「……ぐっ」


その凄まじい威力に比例して、俺の目に見えない部分に負荷がかかる感覚がする。


しばらく待つと、その感覚はすーっと引いていった。流石に、MPを全部使い切るのは無茶だったらしい。


「……む。だいじょぶ?」

「ああ」

「技名は……プラネット・バスターとかでいいかな?」

「……そうだな」


澄火の発想のおかげで、念願の技を増やすことができた。これは大きな収穫……なのか?


うん。多分、大きな収穫だろう。主に、モチベーションという意味で。


「先を急ぐか」

「……ん」


MPの回復を待ち、俺たちは行軍を再開した。

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