第1話 技
俺は少し進んだところで、羅針盤の蓋をぱかっと開ける。
すると、石狩ダンジョンと同じように羅針盤の針がぐるぐるぐるぐると回転を始めた。
数秒後、回転していた針が止まり、そしてきちきちきちと針の形が縦に長い二等辺三角形へと変化する。
そして、針の先端から一方向に向けて光線が出現した。
「……よし」
光線は、案の定というべきか下の高階層の方へと伸びている。
俺は羅針盤を一旦リュックにしまい、背負っていた刀袋から刀を、リュックから剣帯を取り出して腰に装着する。
心なしか、初めてつけた時よりもおさまりが良くなっている気がする。
装備をつけたところで、俺はステータスを開く。
若槻 翔
レベル68
HP 2145/2145
MP 4621/4621
SP 0
筋力 1667
魔力 1421
敏捷 1590
耐久 1571
器用 1542
レベルはあまり伸びていないものの、ステータスは結構伸びた。特に、筋力の伸びが素晴らしい。
俺はスワイプしてスキル欄を開く。
ユニークスキル
能力奪取Ⅰ
俺はそっとステータスを閉じる。
澄火の方を見ると、ステータスを何やら熱心に操作している。
おそらく、スキルを取得しているのだろう。
少し悲しみに暮れながらそれを眺めていると、澄火はひょいっとステータスを閉じた。
そしてそのままぐっと構えると、ぴしゃあんと紫の雷を体から放出する。
「おわっ」
俺は突然の澄火の奇行に後ずさる。
雷が消えると、なぜか澄火の姿が消失していた。
「ん。こっち」
なぜか、俺の後ろから澄火の声が降ってくる。
「紫電のレベルが上がって、体を雷に変化させられるようになった」
「……すごいな」
制御は難しそうだが、今見た感じだと雷と同じスピードで動けそうだ。
攻撃、防御、回避、追撃などなど、あらゆる場面で使える技だろう。
「…………ん。名付けて、『雷帝』」
そのうち、二つ名になりそうな名前だ。
今の所、澄火の技は、雷を纏う「纏雷」、そして雷に変化する「雷帝」と言ったところか。
どちらもなかなかかっこいい技だ。
俺もこの二刀を使った技を考案した方がいいかもしれない。それこそ、『スターバーストストリーム』的なやつを。
そうだな……最高速度で突進して斬り払う
あるいは加速状態で放つ最速の抜刀術・無斬とか?
「……ん。『加速装置』は技なんじゃないの?」
「……あれは……なんというか、ただステータスの出力を上げているだけだし」
便宜上名前をつけているだけで、特に技という意識はなかった。
「……ん。あれは技。だから、わざわざ厨二病みたいな技を作る必要はない」
澄火に釘を刺されてしまった。こころなしかちょっと視線も呆れ気味だ。
……確かに、冷静に考えればちょっと痛かったかもしれない。
とりあえず、澄火の言う通り「加速装置」を技ということにしておこう。
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