第5章 プリンセス
プロローグ
アメリカ、アラスカ州北部の某所。
俺は、プライベートジェットから降り立った。
「……ちょっと肌寒いな」
俺の格好は長袖のTシャツにパンツという格好。ちなみに、どちらも日本が世界に誇るブランド、ユニクロだ。
「……ん」
澄火もヒョイっとプライベートジェットから飛び降りて俺の横に着地した。
「……ちょっと寒い」
そういうと澄火はきゅっと抱きついてくる。
澄火の格好は、俺が選んだ制服風ファッション。とても可愛いらしいが、確かに寒そうだ。
俺で暖を取ろうとする澄火を優しく引き剥がし、持ってきたパーカーを着せてやる。こちらはユニクロではなく、澄火が来ている服と同じブランド……サンライズのやつだ。
「……ん。あったかい」
言葉とは裏腹に、澄火はちょっと不満そうだった。
俺はついでとばかりにリュックから羅針盤を取り出して地図と照合する。
「……ん。場所は合ってるみたいだね」
「だな」
澄火は横からずいっと羅針盤を覗き込んでそう言った。
俺は頷いて羅針盤を懐にしまう。
「プライベートジェットを出してくれるなんて、太っ腹だな……」
「ん。北海道の報酬がそれくらい高かったという印」
俺たちが乗ってきたプライベートジェットは、日本ダンジョン探索者協会が所有しているジェット機の一つだ。
今回、北海道の一件の報酬代わりに俺たちに貸してくれたのだ。
初めて乗ったが、サービスが充実していてかなり満足感の高いフライトだった。
「……ん。じゃあ、早くダンジョン行こ」
「だな」
俺はコックピッドの方に会釈して、空港の入口へと行く。
難なく入国管理局を突破し、俺たちは現地の軍隊の人との約束の場所へと急ぐ。
熊川さんが、現地の軍隊に俺たちをダンジョンまで連れて行ってもらうよう、あらかじめ根回してくれていたのだ。入国がスムーズに行ったのも、そのおかげだったりする。
お土産を何か買って行かなくてはなるまい。プライベートジェットの空いたスペースにたくさん詰め込めるだろう。
「Hello」
「は……ハロー」
すでに待機していた寡黙な軍人さんと握手を交わし、あいさつもそこそこに寒冷地仕様の軍用車に乗せてもらう。
「Here we are」
二時間ほど経ち、ダンジョンの中に入ったところで運転している軍人の人がそう言った。意味は……ついたぜ、といったところか。
「サンキュー」
と俺は思いっきりのカタカナ英語で返す。
一応、高校受験の時に結構勉強したので日常会話ぐらいならできるが、発音はメチャクチャだ。
しかしそんなカタカナ英語でも謝意は伝わったのか、運転している軍人さんはサムズアップで返してくれた。
寡黙なだけで、意外と気の良さそうな人だ。
あとで機会があったら、試しに話してみようか……
俺はそんなことを考えつつダンジョンの方を見る。
日本と同じように、ダンジョンの周囲は軍隊が厳重に守っている。
少しの間の入り口で停車したのち、車は基地内へと進んでいく。
そして隔壁をいくつも通過した先に、俺たちはダンジョンの洞窟を発見した。
そこまで気温は低くないはずだが、ダンジョンの入り口は何故か凍りついている。
俺は軍用車から降りてダンジョンの入り口へと立つ。
「さて、行くか」
「……ん」
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