第7話 解放者

目が覚めた。

俺は未だ疲労が残る身体をおこして、周りを見渡す。


多数の本や大きなコンピューターが並ぶ部屋。俺が寝ていたのは、そんな場所に設置されたベッドのようである。


……ここは?


「おはよう、起きたわね。とりあえず、相方を起こしてここまできなさい」


と、どこからか熊川さんの声が聞こえてきた。

俺はすぐそばで同じように寝ていた澄火を揺する。


「……んん……若くん」


澄火は目を微かに開くと、俺にぎゅーっと抱きついてくる。

胸元に額を擦り付けて甘えてくる澄火の頭を撫でつつ、


「そろそろ起きる時間だぞー」


と声をかける。


「……ん……わかった」


澄火はそういうと、名残惜しそうに俺をホールドしていた手を離した。そして、こちらに手を伸ばしてくる。


「……どうしたんだ?」

「抱っこ」


…………抱っこ?


「全身筋肉痛。動けない」

「……ああ」


なるほど。

かく言う俺も「加速装置」を使ったせいか、疲労がすごい。多分熊川さんが治療してくれたのか、痛みはないが。

俺は澄火の膝裏と首の後ろに手を回し、ひょいっと抱え上げる。


そのまま、俺はおそらく熊川さんが待っているであろう方向へと行く。


「……きたわね」


と、丸い円柱のような物体の一部がぱかりと空く。もちろん、中にいるのは熊川さんだ。

内部には、あり得ないほど大量のモニターに、これまたありえないほどの情報が書かれていた。


「まあ座んなさい」


そういうと、熊川さんは近くにあるソファを指し示す。俺は澄火を抱えたまま腰を下ろして、澄火を横に座らせる。


熊川さんは大量のモニタのうち一つを切り離し、パソコンを一台持ってくると対面に腰掛けた。


「……さて。一体何があったのか、聞かせてもらうわよ」

「は、はい。まず……」


石狩ダンジョンに行って帰ろうと思ったらダンジョン災害の対処に駆り出されてその最中に「解放者」というグループの戦闘員を名乗る「忘剣」という男に襲われるも忘剣は赤い液体になって消えてしまった……


というような話を俺は話した。


「……解放者、か。まさか、大罪に続いて接触することになるとはね」


熊川さんは何か解放者に苦い思い出でもあるのか、苦い顔でそう言った。


「解放者ってなんなんです?」

「……そうね。平たくいえば、探索者を我々ダンジョン探索者協会から解放しようと目論んでいる連中よ」

「なるほど」


それでダンジョン災害を起こして、日本ダンジョン探索者協会への不信を高めようとした、ということか?


「解放者に関しては、日本ダンジョン探索者協会には触れようとしない人間の方が多いわ。なぜなら、この協会のダークサイドに触れた人間の方が多いからね」

「…………」


あの忘剣も、何かそういう過去を持っているのだろうか。

俺は少しの間、忘剣に思いを馳せた。

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