第6話 純白

澄火は無言で突進し、抜刀術を仕掛ける。


刀は大剣と衝突するも、澄火はくるりと舞って今度は突きを繰り出した。

 

忘剣がその突きを回避した時を狙い、俺はアム・レアーのビームを撃つ。


「煩わしい」


忘剣はそういうと、アム・レアーがある方へと向かって大剣を投げつける。

半ば攻撃が来るのを予想していた俺は虚空へアム・レアーを収納し、攻撃を回避する。


忘剣は少し苛立ったように大剣を引き寄せて回収する。

その隙を見逃さず澄火が紫電を放つが、忘剣はひらりと大剣を盾にして自分の身を守る。


紫電は大剣に命中するも、忘剣には届かなかった。


忘剣の守りを崩せぬまま時間が過ぎていく。


澄火のスピードは、ステータスと、そして纏雷の発動による加速によって支えられている。

MPの回復は本来の時の流れに従うため、このままだとどんどんMPがなくなっていってしまう。


澄火は焦ったのか、一度だけ攻撃が雑になってしまった。

その隙を逃さず、忘剣は澄火の持つ刀を弾き飛ばした。そして、そのまま大剣を澄火に向かって振り下ろす。


––––動け動け動け!


俺は未だ疲労が強く残る自分の体を無理矢理加速させ、澄火に向けて放たれた斬撃を受け止める。


「澄火!」

「はああ!」


澄火が弾かれた刀をキャッチしてそのまま切りかかる。


……ごぷり。


その瞬間、忘剣の体が赤い液体となって消えた。

澄火の斬撃は、赤い液体をただ無意味に切り裂いただけに終わる。


「……終わった、のか?」

「……ん」


澄火は頷くと、加速状態を解く。

俺も同じように「加速装置」を解く。


その瞬間、先ほどとは比にならないレベルの疲労が襲ってきた。

俺は立っていることさえできず、地面に倒れ伏した。


「……ん」


澄火も同様のようで、俺の上にどさりと乗っかってきた。

澄火が無事なことに安心したのか、俺の意識がすうっと遠くなっていく。


––––まずい。まだスタンピードは終わってないかもしれないのに……


「大丈夫ですよ」


と、誰かが俺たちのそばに降り立った。


純白の衣装に身を包んだ少女。

周囲には多数の光の輪を浮かべ、手には一振りの美しい剣を持っている。

こちらに背中を向けているため顔はわからないが、代わりに背中綺麗な羽を生やしているのが見える。


––––もしかして……


「後はわたくしにお任せください。……よくがんばりましたね」


俺はその正体を確かめることもできぬまま、意識を失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る