第2話 戦闘開始!
戦闘地に近づくにつれて、だんだんと景色が日常から外れたものに変わっていった。
あちこちに転がる死体。モンスターのドロップ。四肢を失い気絶したように横たわっている人。
あちこちの建物から、息を潜めている生存者の気配もする。
俺は駆け抜けざまに、逃げ惑う生存者を襲おうとしているモンスターを切り捨てる。
低階層のモンスターのようで、とても戦闘地帯から逃れられそうにはない。
どうも、ダンジョンの外でもモンスターが湧くようになっているようだ。
「……助けに来てくれたのね!」
俺はその声を無視して戦闘地帯へ急ぐ。
今はとても構っている余裕はない。
戦闘地帯の戦線が崩壊してしまえば、今とは洒落にならない被害がでてしまう。
残念だが、後からくる自衛隊員に任せるしかない。
澄火もそれを理解してくれているのか、特に何も言わずについてきてくれる。
「アム・レアー」
俺は戦闘地帯が見えた瞬間、アム・レアー四機を展開してステータスを全開にするイメージで「加速装置」を起動する。
澄火を含めた周囲の動きがゆっくりになる。
どうやら自衛隊は探索者の支援をしつつ必要になったら体を張る、という作戦をとっているようで、ダンジョンの入り口から通じる通路の前に探索者に戦闘させ、その後ろから銃撃で援護を加えている。
隔壁はもうすでに全部壊れてしまったようだ。
まだ戦線が持ち堪えているのは、自衛隊を鎧袖一触で倒せるレベルの魔物はまだ出てきていないからか。
……いや、というより、命と引き換えになんとか持ち堪えた、といったところか。俺は戦死した探索者の遺体横に、一際大きい魔石が転がっているのを発見した。
ひとまず、今いる魔物を全て斬ろう。俺は加速したままそう思考し、地面を蹴ってダンジョンの入り口まで行く。
魔物を全て斬り、あるいはアム・レアーで撃ち抜く。
最後に通路の奥に向けてMPの半分以上を消費したビームを放ち、ステータスの出力を元に戻すイメージをする。
「誰だ!?」
はたからはいきなり現れたように見えるのだろう。
そう探索者が怒鳴ってきた。
仲間を失ったのか、かなりピリピリとした雰囲気だ。
「探索者の若槻です。ここは私と私の相棒の澄火に任せて、市内の魔物の掃討と市民の避難をお願いします」
「……ん」
俺の横に澄火が着地する。
なぜかちょっとご機嫌だ。
「2人で、大丈夫か?」
と、おそらくこの場で最も階級が上なのだろう人物がそういった。
俺は首肯してアム・レアーにMPを通す。
澄火も雷の球……澄火曰く「雷球」をいくつか浮かべる。
「ええ。問題ありません」
「よし。我々は散開する!市民の警護にあたれ!」
「は!」
統率の取れた動きで自衛隊員が三々五々に散っていく。
「……よし」
俺は二刀を構え直して、通路の奥を睨む。
「行くぞ」
「……ん」
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