第1話 到着

説明書のイメージは、普通のイメージとは違い、輪郭がひどくくっきりとしていた。

なんだかすこし気味が悪かったものの、俺はそのイメージに書かれた文字を読んでいく。



プロジェクト:#### ピース1/5

空中に浮かぶ、四位一体の個人用ビーム兵器。

装備者のMPを通し、また消費することで操作が可能。

習熟すれば、装備者の意思のみで動かせる。

この兵器は装備者の意思によって€€€€へと隠すことが可能。

この説明書は、最初にMPを消費した時に装備者の知的領域にインプットされ、その後これを想起することで閲覧者の知的領域内で溶けて消える。

以上



イメージは読み終わるとオブラートのようにほろほろと崩れて消えた。

思い出そうと思えば、各内容を思い出すことができる。


全く、凄まじい技術だ。


……それより、ダンジョンでアム・レアーを意思だけで操作しようと小一時間ほど奮闘した気がするが、どうやらあれは本来上級者向けの操作方法だったようだ。


俺はこっそりとリュックに手を突っ込み、リュックの中にアム・レアーを出現させてみる。


出現させたアム・レアーは、俺の意思によって、確かにぱっと虚空へと隠すことができた。

四つのうち一つを出したりしまったりすることもできる。そこら辺は柔軟に運用できそうだ。

どこへ隠しているのかは、文字化けしていて見えなかった。おそらく、€€€€というのは俺たちの世界にはまだない概念なのだろう。


「あと1分で到着だ。飛び出す準備をしてくれ」

「了解です」


俺はそう答えて、左右の刀を確かめる。

指輪を外してステータスの制限を取っ払い、精神を集中させる。


タブレットを開くと、俺たちも含めた現場急行中の10人のうち、レベル20〜30の2人の状態が「戦死」に、40〜50の2人の状態が「災害対応中」へと変わっていた。俺たちも含めた残り6人の状態は「現場急行中」のままだ。


「もうすぐ到着だ!」


車の外をチラリと見ると、札幌ダンジョンまであと10kmという表示が見えた。


そして、札幌ダンジョンから半径10kmに入った瞬間、俺は周囲の空気が変化したのを感じた。

初めてダンジョンの入り口を見た時に感じた異質な感じ。まるで、ダンジョンの入り口がすぐそばにあるようだ。


「もう力を使えるようです!」


俺はそう叫んで車のドアを開き、走行中の車内から飛び出す。

そのまま、微かに聞こえる戦闘音を頼りに、車を追い越して駆ける。


「ん。私もいる」


澄火も纏雷を発動しつつ追いついてきた。


「よし。行くぞ」

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